Research Abstract |
癌の転移浸潤には細胞接着因子を介した細胞-細胞及び細胞-細胞外基質間の接着が重要であり,癌細胞膜上に発現するインテグリン蛋白と転移,予後との関連が報告されている。今年度の研究は,胆管癌(32例),胆嚢癌(23例)切除症例における各種インテグリン蛋白(αV,α2,α3)の発現と癌の転移浸潤,特にリンパ節転移との関連について臨床病理学的検討を加えた。免疫組織学的手技により,染色濃度を同一切片上の正常胆道上皮の染色濃度とほぼ同等な物を弱陽性(1)とし,陰性(0),陽性(2),強陽性(3)を含む0〜3までの4段階に分け数値化した。その結果,胆管癌原発巣においてはリンパ節転移陽性症例ではαV:2.27±0.78,α2:2.18±0.87,α3:2.18±0.40であり,リンパ節転移陰性症例ではαV:1.57±0.54,α2:1.43±0.54,α:1.57±0.54であった。胆嚢癌原発巣では,リンパ節転移陽性症例がαV:2.33±0.81,α2:2.17±0.75,α3:2.50±0.55で,リンパ節転移陰性症例がαV:1.33±0.57,α2:1.46±0.47,α3:1.33±0.58であり,リンパ節転移陰性症例に比して陽性症例ではαV,α2,α3インテグリンの発現が有意に亢進していた(p<0.05)。また,リンパ節転移部,癌先進部では原発巣に比較していずれのインテグリンの染色性も低下する傾向が認められた。ly,v,pnとインテグリン発現との間には明らかな関係は認められなかった。RT-PCR法においても,胆管癌,胆嚢癌原発巣でのインテグリンαV mRNAの発現亢進が確認された。【結語】胆管癌,胆嚢癌では,αV,α2,α3インテグリンの発現が亢進している症例にリンパ節転移を起こしやすい性質があることが示唆された。今後,これらインテグリンの発現が他の予後規定因子と併せて,独立した予後規定因子であるかを多変量解析を用いて検索を進行中である。
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