1999 Fiscal Year Annual Research Report
ラット侵襲負荷肝を用いた移植後のビリルビン代謝とHeme Oxygenaseの関連
Project/Area Number |
10770627
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加藤 悠太郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70265833)
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Keywords | Heme Oxygenase / 冷保存再灌流障害 / 胆汁分泌 / ビリルビン |
Research Abstract |
ラット肝への誘導型Heme Oxygenase(HO-1)の誘導を惹起する侵襲として,出血性ショック・蘇生モデルを作成したが,そのモデルの不安定さから,薬剤ヘミンによるHO-1誘導を行った.このHO-1誘導を受けたラット肝の冷保存・再灌流における胆汁分泌をみることで,HO-1の保存前誘導による再灌流障害抑制効果を検討した.またHO反応の産物であるビリルビン(BR)および一酸化炭素(CO)の役割についても検討した.ヘミン投与後18時間で全肝を摘出し,UW保存液に16時間冷保存後Krebs-Henseleit Bufferにて体外灌流を行い,胆汁を採取した.実験群としては,HO-1非誘導冷保存群(コントロール群),HO-1誘導後冷保存群,HO-1誘導後冷保存再灌流時に灌流液中にHO拮抗阻害剤ZnPPを添加した群,さらにBR添加群,CO添加群の5群に分けた.測定パラメータは胆汁流量,胆汁中への胆汁酸分泌量,リン脂質分泌量とした.再灌流後の胆汁流量は全ての群で灌流時間とともに回復し,30分でプラトーに達した.HO-1誘導群ではコントロール群に比して,胆汁流量は有意に増加したが,ZnPP添加により低下した.またHO-1誘導群の胆汁流量の増加は胆汁中への胆汁酸およびリン脂質の分泌増加を伴い,ミトコンドリア機能の良好化を示唆した.このHO-1誘導の効果の機序を検討するにあたりBRに着目した.再灌流時にZnPP添加により胆汁流量,胆汁中への胆汁酸およびリン脂質分泌量は有意に低下するが,さらに再灌流時にBRを添加するとこれらのパラメータがすべて回復した.添加BR濃度を1-5μMと変化させると,1,2,3μMの低濃度では濃度依存性に胆汁流量,胆汁中への胆汁酸およびリン脂質分泌量は回復したが,4μM以上では逆に全てのパラメータが低下するという添加BR3μMをピークとする2相性の変化が認められた.一方,COを添加しても,回復がみられなかった.以上の実験結果から,HO-1の前誘導により冷保存再灌流時の胆汁分泌機能の低下は抑制され,その機序として低濃度BRの関与が示唆された.
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