1999 Fiscal Year Annual Research Report
泌尿器疾患に対する鍼治療効果の検討 ―尿流動態を指標として―
Project/Area Number |
10770783
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
はま田 淳 筑波大学, 心身障害学系, 講師 (80261767)
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Keywords | 前立腺疾患 / 排尿障害 / ウロフロメトリー / 低周波鍼通電療法 |
Research Abstract |
プロスタトディニアの病態は未だ明らかになっていない。仮説の1つとして尿流の異常があげられる。今回、鍼治療の効果発現機序として尿流異常の改善を考え、前立腺疾患(排尿障害、プロスタトディニア)例に対して、低周波鍼通電刺激の直前と直後の尿流動態と自覚症状を指標とし、比較検討した。対象は医師が本治験に適当と判断し、患者の同意が得られた成人男性8例(年齢55〜89歳 前立腺肥大症5例、プロスタトディニア3例)であった。そのうち3例は、肛門疾患、睾丸疾患の存在のため、除外した。刺激部位は恥骨後隙(左右横骨穴)、刺激方法は低周波鍼通電(1Hz、15分)で、最近1週間の排尿状態の自覚症状をInternational Prostate Symptom Score(IPSS)と刺激直前と刺激直後の排尿において(いずれも初発尿意で行った)、最大尿流率、平均尿流率、排尿量、排尿時間、残尿量、残尿率を測定した。その結果、5例全てでQmaxに明確な変化がみられなかった。2例が刺激前後の自覚症状と尿流動態がそれぞれ逆に変化した。刺激直後、自覚症状のスコアが減少したのは2例、増加したのは2例、不変が1例とばらつきがみられた。Qmaxが正常値に近かった例では全く変化せず、他の症例においても変化は非常に小さかった。Qaveにおいても、刺激直前に0.6ml/secと他の症例と比較して極めて低い値を示した例以外では大きな変化はみられなかった。しかし、測定できた4例とも上昇がみられた。手術適応の1つの目安とされる残尿率30%以上の2例では残尿率の低下がみられた。これらのことから、尿道抵抗および膀胱の最大収縮力に大きな変化はなかったと推定されるが、Qaveに上昇のみられた例もあり、排尿全体を通じての機能改善があったことが考えられる。自覚症状の変化にはばらつきが見られ、QOLの改善も1例であり、1回の刺激では明確な自覚症状の改善やQOLの向上は得られなかった。 絶縁鍼の入手不能により、当初予定していた刺激組織別の反応を見ることができなかった。例数が少なかったため、統計的有効性を検討するにも限界があった。現在、健康人での検討を実施中である。
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