1998 Fiscal Year Annual Research Report
前立腺癌のエストロゲン受容体の発現と受容体活性因子によるホルモン依存性増殖の制御
Project/Area Number |
10770808
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小津 兆一郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90296674)
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Keywords | 前立腺癌 / エストロゲン受容体 / ホルモン依存性増殖 |
Research Abstract |
エストロゲンの細胞生物学的作用には奇異性作用など不明な点が多い。最浜、新たなエストロゲン受容体(ER-β)が同定され、これらエストロゲン作用を解明するものとして注目されている。本研究では、前立腺癌におけるエストロゲンの作用につきER-α-βの発現の解析より検討した。 ヒト前立腺癌培養細胞株(アンドロゲン依存性増殖細胞LNCap,JCA-1,および非依存性増殖細胞DU-145,PC-3)、ならびに24例の前立腺全摘術により得られた未治療前立腺癌および非癌前立腺組織に対しRT-PCRによるER-α-βのmRNAの発現を検討した。ヒト前立腺癌培養細胞株においては、PCR産物に対しdirect DNA sequence解析を行い、その塩基配列を検討し、さらに17β-estradiol,diethylstilbestrolによる細胞障害性を検討した。 4種のヒト前立腺癌培養細胞全例にER-βの発現が認められ、ER-αはLNCap,JCA-1の2株にのみその発現が示され,PCR産物の塩基配列に明らかな異常は存在しなかった。24例の未治療前立腺癌組織においては20例にER-α一β両者の発現が認められたが、同一症例の非癌部前立腺組織でのこれら発現は多様であり、ER-α-βの両者の発現が示されたのは10例のみであった。17β-estradiolの添加培養においてLNCap,JCA-1では増殖抑制が示され、一方diethyl-stilbestrolの添加培養においてはこの2者に加えDU-145も増殖抑制を示した。 前立腺癌培養細胞および未治療前立腺癌組織において高率にER-βの発現が示された。ER-αの発現が認められた細胞がアンドロゲン依存性増殖を示すことより前立腺癌細胞のアンドロゲン依存性増殖にER-αの関与が示唆された。また、未治療前立腺癌組織全例にER-α-βが発現しアンドロゲン依存性増殖能を失った細胞にER-αの発現を認めなかったことは、前立腺癌のホルモン不応性にER-α発現が関係している可能性が考えられた。
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