新たな接着分子Trophininの各種組織における局在と機能に関する研究-婦人科悪性腫瘍を中心として-

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10770857
• Research Institution: Keio University
• Principal Investigator: 冨永 英一郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80276328)
• Keywords: trophinin / 接着分子 / 免疫染色 / 子宮体癌

Research Abstract

抗Trophinin抗体を用いた免疫組織学的検討
Trophininは胚と子宮体内膜との接着に関与する分子として新たに発見された接着分子である。我々はTrophininに対するmonoclonal抗体を用いて初期胎盤、各種絨毛性疾患、子宮体内膜における免疫組織化学的反応性を検討し、以下の結果を得て、昨年度報告した。
(1)6週前後の胎盤ではSyncytiotrophoblastが強陽性を示し、Trophininの局在が示唆された。
(2)胞状奇胎においては陽性反応は初期胎盤と同様Syncytiotrophoblastに認められたが、より進行した絨毛性疾患である侵入奇胎、絨毛癌では陽性所見が減弱する傾向を認めた。
(3)子宮体内膜は、増殖期後期から分泌期中期にかけて陽性であり、特に分泌期初期内膜は強陽性を示した。この時期は着床の時期(implantation window)にあたり、受精卵の着床に関与することが示唆された。
そこで、Trophininが接着分子として癌細胞間においておよび癌浸潤先進部においてどのように発現しているかについて検討するため、本年度は子宮体癌(類内膜腺癌)におけるTrophininの発現を免疫組織化学的に検索した。しかしながら28例中3例とわずかに10.7パーセントが弱陽性を示したにすぎず、類内膜腺癌では大部分の症例でその発現が減弱していることが示された。現在、Trophininの発現の有無と分化度、転移頻度、再発の有無などとの関連について症例数を加えつつ検討を行っている。