1999 Fiscal Year Annual Research Report
エリスロマイシンによる好中球アポトーシスの誘導とその機序
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10770869
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
太田 伸男 山形大学, 医学部, 助手 (20282212)
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Keywords | 好中球 / アポトーシス / マクロライド |
Research Abstract |
エリスロマイシンの慢性副鼻腔炎に対する高い臨床効果については確認されているが、その薬理作用についてはまだ不明な点が多い。薬剤の感受性や濃度の点から直接的な抗菌作用ではなく、抗炎症作用時に好中球機能の抑制によると推察されているが、炎症の遷延化の回避という点からの検討はなされていない。近年、アポトーシスの研究が進み、炎症反応の制御にも重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた。本研究で我々は、エリスロマイシンの好中球アポトーシスの誘導性について検討した結果、エリスロマイシンとの混合培養6時間後から、好中球にアポトーシスが誘導された。また、この誘導はエリスロマイシンの濃度依存性で、臨床濃度である10μg/mlでも認められた。さらに、セフェム系、アミノグリコシド系、ペニシリン系等の他抗生物質及びマクロライド系の他の薬剤によって好中球にアポトーシスが誘導されるかについても検討した。その結果、エリスロマイシンと同じ14印環系のマクロライドであるロキシスロマイシンにのみ好中球アポトーシス誘導活性が認められた。 次に、この誘導における各種プロテインキナーゼの関与の有無について検討した。具体的には、プロテインキナーゼAインヒビター、プロテインキナーゼCインヒビター、チロジンキナーゼインヒビター、エンドヌクレエースインヒビター等にて好中球を適当時間前処置し、その後エリスロマイシンを添加してアポトーシスの誘導の程度について比較検討した。その結果、プロテインキナーゼAインヒビターはエリスロマイシンによる好中球アポトーシスを著名に抑制した。 これらを考えあわせると、エリスロマイシンは好中球にアポトーシスを誘導し、その結果炎症反応と組織障害を妨げることによって、その有効性を発揮するものと考えられる。また、その機序としてプロテインキナーゼAの経路が関与しているものと推測された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 稲村和俊 他: "エリスロマイシンの好中球アポトーシスに及ぼす影響"耳鼻咽喉科免疫アレルギー. 16・2. 214-215 (1998)
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[Publications] Nobuo Ohta 他: "Neutrophil functions of patients with Wegener's granulomatosis."Rhinology. 15・9. 81-83 (1999)