1998 Fiscal Year Annual Research Report
頭頸部癌発癌機序におけるコレステロール硫酸およびコレステロール硫酸合成酵素の役割
Project/Area Number |
10770873
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
肥後 隆三郎 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (10301110)
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Keywords | 扁平上皮癌 / コレステロール硫酸 / コレステロール硫酸合成酵素 |
Research Abstract |
頭頸部癌はほとんどが扁平上皮癌である。今回、扁平上皮癌発癌過程におけるコレステロール硫酸(CS)およびコレステロール硫酸合成酵素(CST)の役割を検討した。ヒト頭頸部癌組織を標本として用いる場合、そのヘテロジニテイにより一定した結果が得られなかったため、今回は標本の均一性および扱いやすさを考慮しSENCARマウス皮膚を用いた。まず発癌プロモーター(フォルボールエステルおよびクリサロビン)により処理されたSENCARマウス皮膚においてCS量およびCST活性はともに上昇し、特にCSの変化パターンはトランスグルタミネースタイプ1(TG-1)活性の経時的変化に相関するのに対し、CST活性の変化パターンは皮膚細胞のDNA合成の経時的変化とパラレルであった。次に、初代培養ケラチノサイトにおいてフオルボールエステル添加によりCST活性とTG-1活性は両方とも上昇した。またEGF、KGF、そしてIGF-1の添加によりCST活性の増加が認められた。この増加はDNA合成の増加と一致したが、TG-1活性には有意な差は認められなかった。最後に、化学的多段階発癌法により発生した腫瘍(乳頭腫、扁平上皮癌)ではCST活性は上昇するもののTG-1活性は変化がみられなかった。以上のことを総括してCSTとCSの発癌プロモーションおよび化学的多段階発癌における役割を推察すると、まずフォルボールエステルのような発癌プロモーターを正常皮膚に投与した場合には、フォルボールエステルが直接またはEGFr伝達系を介してCSTを活性化し、結果的に最終分化とDNA合成の増加の両方を誘導する。一方腫瘍細胞では、やはり正常の皮膚同様フォルボールエステルはCSTを活性化させ最終分化とDNA合成を誘導するが分化誘導に抵抗を示すため、腫瘍細胞のクローナルな増加が起きさらに細胞増殖が続く(clonalexpansion)と考えられた。
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