1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10770878
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西村 俊郎 金沢大学, 医学部・附属病院, 講師 (80251958)
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Keywords | 遊離脂肪移植 / VEGF / ラット |
Research Abstract |
近年,耳鼻咽喉科領域で反回神経麻痺での喉頭の注入材料として,また整容的手術の補充充填材料として自己脂肪の移植が注目されている.しかし移植後の脂肪組織の長期経過については症例数が少なく生着の機構や移植後の吸収については不明な点が多い.今回自己遊離脂肪組織移植の生着機構の解明のため,ラットを用いたモデルを作成し以下の検討を行った.ラット鼠径部の自己脂肪組織を採取し背部皮下に移植する群と大腿部筋肉内に移植する群を作り,それぞれ一塊に移植する方法,細切して注射針で注入する方法で移植を行った.移植片の重量,組織学的変化,免疫組織学的に血管新生や脂肪細胞の状態について検討した.背部皮下移植群では移植片の重量と日数の経過の間には逆相関が認められ,脂肪を一塊にして移植した群は細切して移植した群に比較して有意に重量が保存されていた.組織学的検討では,いずれの群でも移植片の顕微鏡下の代表的視野における全体に対する脂肪組織の比率と日数の間には逆相関の関係が認められ,逆に結合組織の比率と日数の間には順相関の関係が認められた.移植片の生着に関与する因子として血管新生に着目し抗von Willebrand因子抗体により染色された微小血管と血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor,VEGF)との関連について免疫組織学的検索を行った.VEGF陽性細胞は1週間後に移植脂肪組織周辺の結合組織に発現したが次第に減少し3ケ月以後は認められなくなった.移植部位の比較では筋肉内移植群でVEGF陽性細胞数が有意に高値を示した.微小血管数は1週間後までに著名に増加したがその後増加は認められなかった.移植片に対しTUNEL法によるアポトーシス細胞の検索を行った結果,脂肪細胞のアポトーシスは移植1週間後から3ケ月後まで認められた.本検討により脂肪組織生着機構として微小血管の増生があることが明らかになったが,生着後もアポトーシスが持続することが術後の移植脂肪の減少の一因であることが判明した.今後の臨床応用に当たっては脂肪細胞の生着を向上させアポトーシスの誘導をくい止める方策を必要であると考えられた.
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