1998 Fiscal Year Annual Research Report
前庭刺激の中枢ケモカイン神経系に及ぼす影響について
Project/Area Number |
10770884
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀井 新 大阪大学, 医学部, 助手 (30294060)
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Keywords | ケモカイン / cytokine-induced neutrophil chemoattractant(CINC) / バゾプレッシン / 前庭 / 動揺病 / めまい / ストレス / 中枢神経系 |
Research Abstract |
最近、ケモカインの一種であるcytokine-induced neutrophil chemoattractant(CINC)と呼ばれるペプチドがラット視床下部-下垂体後葉系に存在する事が報告され、拘束ストレスや高浸透圧負荷で活性化される事が判明してきた。CINCは視床下部室傍核、視索上核で産性され下垂体後葉から末梢血液中に遊離される生理活性物質で、バゾプレッシン(VP)、オキシトシンに次ぐ第3の後葉ホルモンとして位置付けされている。 VPはめまい患者や動揺病に罹患した際に血中濃度が増加する事が報告されており、前庭刺激によりその血中濃度が変化する可能性が示唆される。視索上核のVPニューロンの36%がCINCと共存している事、CINCがストレス時に活性化される事より、めまいや動揺病の際にVP、CINCニューロンが活性化されその血中濃度が増加する事が予想される。そこで本実験では、ラット内耳電気刺激およびカロリック刺激の血中VP、CINC濃度に対する影響を検討した。 血中VP濃度は内耳電気刺激、温水カロリック刺激、冷水カロリック刺激により無刺激群、37度の注水によるカロリック刺激群に比べ増加したが、血中CINC濃度は変化しなかった。内耳電気刺激や、温水・冷水カロリック刺激は一側の前庭機能を変化させる一方、37度注水によるカロリック刺激は内リンパ流動を起こさず前庭機能に影響を与えない。以上の結果より、前庭入力の変化によりVPニューロンが活性化され、血中VP濃度が上昇する事が判明した。一方、CINCニューロンは拘束ストレスや高浸透圧負荷による活性化が報告されているが、前庭刺激には影響を受けず、同じ視床下部ニューロンではあるが、VPニューロンとCINCニューロンは異なった刺激に反応する事が示唆された。前庭刺激による血中VP濃度増加はめまいや動揺病のメカニズムに関与する可能性が示唆される。
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