1999 Fiscal Year Annual Research Report
パッチクランプ法を併用した有毛細胞イオンチャンネルの遺伝子解析
Project/Area Number |
10770890
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中川 尚志 九州大学, 医学部, 助手 (70274470)
|
Keywords | パッチクランプ / ラセン神経節細胞 / イオンチャンネル / 蝸牛求心性神経 / ナトリウムチャンネル / カリウムチャンネル |
Research Abstract |
外有毛細胞において新しい電位依存性カリウムチャンネルがパイロット実験により予想されたために、これにかなりの時間を費やした。しかしながら、測定条件などがうまく合わず、成果を期間内にえることができなかった。研究費を無駄に使うことを避けるために、有毛細胞からの神経信号を受け取るラセン神経節細胞を実験材料に用いた。ラセン神経節細胞も聴覚では情報伝達にかかわる中心的な役割をはたしている。このため今回の研究の主目的である蝸牛内での神経伝達に関わる細胞の膜イオンチャンネルの特性を解析することと同義である。本年度の実験の成果は、ラセン神経節細胞の電位依存性イオンチャンネルの電気的特性を明らかにしたことである。ナトリウムチャンネルの活性化される膜電位かなり過分極側に位置している。それにも関わらず不活性化される膜電位は他の神経細胞と同様であった。また、過分極側で活性化される内向き整流カリウムチャンネルがあることもわかった。研究代表者は以前電依存性カルシウムチャンネルを報告している。これらの結果をあわせると、聴神経の発火には以下の様にイオンチャンネルが働いていることがわかる。ナトリウムチャンネルが過分極側で容易に活性化され、細胞が発火すると電位依存性カルシウムチャンネルが活性化される。これにともないカルシウム依存性カリウムチャンネルが働き、膜電位を過分極させる。すると内向き整流カリウムチャンネルが開き、細胞膜を静止状態にすばやく引き戻す。聴神経は音である周波数情報を伝えるために、すばやい応答が必要とされている。今回の実験の結果は理にかなっている。これら電位依存性イオンチャンネルの電気的特性は他の組織で報告されている同様のチャンネルとは同一ではない。このことから、チャンネルを形成するsubunitの構成が異なっていることが示唆された。
|