1999 Fiscal Year Annual Research Report
中耳炎症性物質による感音性難聴の病態および予後に関する実験的研究
Project/Area Number |
10770901
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
井口 広義 大阪市立大学, 医学部, 講師 (70271195)
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Keywords | 聴覚障害 / 微細形態学 / 聴性脳幹反応 / 内耳有毛細胞 / 緑膿菌外毒素 / 半規管損傷 / インターロイキン8 / フリーラジカル |
Research Abstract |
ケモカインであるインターロイキン8(IL-8)は、特に呼吸器において病態悪化因子として研究が進んでいるが、耳鼻咽喉科領域で特に小児において問題となる滲出性中耳炎の滲出液中にその存在が指摘されている。本研究により、IL-8はその好中球に対する強力な作用により、たとえ中耳腔に存在した場合でも内耳に対しても可逆性の聴覚障害を惹起することが示された。このことは、滲出性中耳炎においては、単に滲出液が貯留していることによって起こる伝音難聴にとどまらず、感音難聴をも惹起しうることを示し、貯留液の排除が必要であることを意味するものと考えられた。またその障害にはフリーラジカルが関与していることが疑われた。 また、臨床的に慢性中耳炎耳から緑膿菌が検出され、感音難聴の惹起もしばしば経験するが、中耳腔に存在する緑膿菌外毒素であるPseudomonas aeruginosa exotoxin A(PaExoA)は、その毒性により主として可逆性の聴覚障害を惹起する可能性が示された。本研究は急性実験であるが、慢性的な毒素の暴露により、非可逆的な聴覚障害も起こりうることが推測される。さらに臨床的に慢性中耳炎に対して手術療法がしばしば行われるが、一般的には手術中に半規管損傷を起こしても聴覚障害は起こりにくいとされている。しかしながら本研究の結果では、PaExoAによる急性暴露実験で聴力が回復した個体に手術的に半規管損傷を作製すると、非可逆的な聴覚障害が生じることが判明し、「半規管損傷を起こしても聴覚障害は起こりにくい」との安易な考えに対して警鐘となった。これは今まであまり着目されていなかった事項である。 本研究により、以上述べたような臨床に還元できる結果が得られた。 本研究の一部は、第99回日本耳鼻咽喉科学会総会、第8回日本耳科学会において口演した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Iguchi H, Anniko M: "Interleukin-8 can affect inner ear function"ORL. 60. 181-189 (1998)
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[Publications] Iguchi H, Anniko M: "Acute effects of semicircular canal destruction on the cochlea, with and without preceding Pseudomonas aeruginosa exotoxin A treatment"Acta Otolaryngol (Stockh). 118. 511-518 (1998)