1998 Fiscal Year Annual Research Report
慢性副鼻腔炎における鼻茸の発生、増殖機序の解明-上皮細胞異常分化における糖蛋白構造変化の関与について-
Project/Area Number |
10770907
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
鴻 信義 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (90233204)
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Keywords | レクチン / 慢性副鼻腔炎 / 鼻茸 / 分泌腺 |
Research Abstract |
慢性副鼻腔炎手術症例より鼻茸を出来るだけ基部から切断し、レクチン染色の施行により糖蛋白の糖末端構造を検索した.以前我々がウサギを用いた実験的副鼻腔炎モデルにおいて認めたポリープは、発生初期の段階であり、ほとんどの上皮は幼弱な扁平あるいは円錐細胞で、線毛の存在は比較的稀であったが、ヒト慢性副鼻腔炎における鼻茸は既に成熟した段階であり、上皮層は多列線毛上皮と肩平または円錐上皮の混在で、形質細胞、リンパ球あるいは好酸球などの炎症細胞浸潤が、浮腫・うっ血した間質内に認められた。また所々粘液の貯留や拡張した腺管がみられ、線紬芽細胞や好中球浸潤が著明であった実験的ポリープとはだいぶ異なった組織像を呈していた。実験的ポリープの形成過程では、上皮下に陥入している幼弱な細胞(いずれ成熟してポリープの基部となるかあるいは上皮下にとどまり異型の分泌腺に成る可能性があると考える)が見られたが、ヒトの鼻茸標本においては同様の形態こそ認めなかったものの、一部に、扁平または円錐上皮細胞が内方に向かい分化・発育しており、そのさらに内方には、異型の分泌腺やあるいは拡張した腺管構造を認めた。各種レクチン(UEA-I,ConA,PNA,MAA,W.GA)染色において、実験的ポリープではポリープ表面と陥入上皮との間にUEA-I染色性の違いを認め、フコース化がポリープの増大に少なからず関与すると考えられたが、ヒト鼻茸においては今のところ鼻茸表層と内方へ発育中の上皮においてフコース及びシアル酸化に若干の違いを認めている。今後は特に上皮下に存在する異型分泌腺に注目し、内方への発育・増殖機転が結果としてヒト鼻茸の増大に関与している可能性を引き続き検索する。
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