1998 Fiscal Year Annual Research Report
中耳真珠腫進展機序に於ける上皮細胞の終末分化-KGFの影響と保存的治療法の探究-
Project/Area Number |
10770909
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
宮崎 日出海 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (30277082)
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Keywords | 中耳真珠腫 / 終末分化 / プロテインカイネースC(PKC) / サイトケラチン / インボルクリン |
Research Abstract |
中耳真珠腫上皮の特徴である"過増殖な性質"を解明して行く一方で、上皮細胞に特有である"終末分化"の特徴を解析することは、真珠腫の発生機序を知る上で大変重要である。中耳真珠腫上皮における終末分化の特徴を調べる目的で、Protein kinase C(PKC)のηとδ、上皮細胞の分化マーカーとして知られるinvolucrinとサイトケラチン(CK)l,10について免疫組織染色法を用いて蛋白レベルでの発現を確認した。中耳真珠腫手術例に対し、術中採取した組織を試料とし、対照として、正常外耳道皮膚、正常皮膚(鼠径、腋窩)、尋常性乾癖の組織標本を用いた。真珠腫上皮では、PKCη、δは基底細胞層と傍基底細胞層の一部、有棘層、顆粒層に出現しており、全体としてシグナルの出現の分布に散らばりが認められた。CK1、10は基底細胞層を除く有棘層、顆粒層に認められ、Involucrinはより上層に強く出現しており、基底細胞層近くまで認める部分もあった。正常外耳道皮膚、正常皮膚(鼠径、腋窩)においてもこれらと同様な発現を認めたが、PKCηはほぼ全層に強く出現していた。また、CK lが顆粒層に強く発現する傾向にあった。尋常性乾癖上皮では他の組織に比較して、PKCδ、Involucrin、CK lが基底層を除く上皮層に強く発現し、PKCηは上皮全層に表層に近いほど強く出現していた。これらの分化マーカー、PKCδ、PKCηの発現パターンの結果から、真珠腫上皮におけるケラチノサイトの最終分化の過程は正常皮膚組織と同様に保たれていると考えられた。今後はKeratincyte growthfactor(KGF)等の因子が分化マーカーや増殖因子に与える影響についても解析を行い、中耳真珠腫に対する保存的治療や再発予防への手がかりをつかむことを研究の目標とする。
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