1999 Fiscal Year Annual Research Report
近視眼の眼軸延長機序における調節の果たす役割の解明-強膜と網膜における細胞外マトリックスの代謝に及ぼす伸展刺激の影響-
Project/Area Number |
10770922
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
世古 裕子 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (60301157)
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Keywords | 強度近視 / 強膜 / 網膜 / 細胞外マトリックス / 成長因子 / 伸展刺激 / 培養細胞 |
Research Abstract |
強度近視眼では、眼軸延長に伴って様々な網膜脈絡膜萎縮症を生じ視力低下を来す。実験近視眼の強膜では、matrix metalloproteinase(以下MMP)活性の増加も報告され(Rada et al,1996)、強膜のリモデリングやサイトカインネットワークが眼軸延長と深く関わっていることがわかってきた。しかし、何がトリガーになってこれらの変化が生じるのかについては今だ不明である。調節や眼圧上昇と眼軸延長との関連については従来から指摘されており、調節や眼圧上昇に伴って強膜や網膜脈絡膜に加わる機械的伸展刺激が眼軸延長のトリガーになっている可能性もある。 本研究では眼軸延長機序における機械的伸展刺激の関与について、細胞外マトリックスと成長因子の面から明らかにすることが目的である。 培養網膜色素上皮細胞における成長因子産生に及ぼす機械的伸展刺激の影響 培養細胞伸縮装置を用い、継代ラット網膜色素上皮細胞にさまざまな程度および周期の機械的伸展刺激を加えた。各条件における、培養上清中の成長因子(TGF-β,VEGF)の濃度をELISAによって測定し、VEGFの発現をノーザンブロットで検討した。その結果、機械的伸展刺激を加えた網膜色素上皮細胞の培養上清中の成長因子(TGF-β,VEGF)の濃度は有意に増加し、VEGFの発現も増加した。この結果は既に、Invest,Ophthalmol.Vis.Sci.の中に掲載された。 培養強膜軟骨細胞および培養強膜線維芽細胞の細胞外マトリックスの代謝変化に及ぼす機械的伸展刺激の影響 培養細胞伸縮装置を用い、ニワトリの強膜軟骨細胞および強膜線維芽細胞にさまざまな程度および周期の機械的伸展刺激を加えた。各条件における細胞外マトリックスの代謝の変化をMMPとTIMP(tissue inhibitor of metallo-proteinase)を指標にして検討した。MMPについてはノーザンブロット,zymography,アッセイキットによって、TIMPについてはノーザンブロットによって検討した。その結果、強膜におけるゼラチナーゼ活性が主にMMP2に由来することが明かとなり、機械的伸展刺激を加えた強膜軟骨細胞および強膜線維芽細胞では、MMPとTIMPともに増加し、特に強膜線維芽細胞において、高いゼラチナーゼ活性が認められた。この結果を論文にまとめ、現在投稿中である。 以上の結果から、機械的伸展刺激が少なくとも部分的には、眼軸延長に寄与している可能性が示唆された。
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