1999 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系幹細胞より網膜固有神経細胞への分化を誘導する因子の研究
Project/Area Number |
10770926
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
栗本 康夫 信州大学, 医学部・附属病院, 講師 (50293519)
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Keywords | 神経幹細胞 / 網膜 / ニューロン / グリア / 神経移植 / 虚血再灌流障害 |
Research Abstract |
ラット中枢神経系幹細胞を一過性虚血負荷眼に移植し、障害をうけた網膜に幹細胞が取り込まれるかどうか検討した。成熟ラットの眼球に高眼圧負荷により一過性網膜虚血を惹起し、再灌流直後に成熟ラット海馬由来神経幹細胞を硝子体腔へ注入した。処置1、2、3、4、8週間後に眼球を摘出し、組織学的検索を行った。対照として非虚血ラット眼にも幹細胞を注入した。虚血負荷眼に移植された幹細胞は1週間後には網膜神経細胞層に侵入し、2〜3週間後には網膜内顆粒層に到達、8週間後には網膜の各層に定着して神経回路網様の形状を示した。また、これらの移植細胞の少なくとも一部はMap2abを発現しており、ニューロンに分化していると考えられた。対照群では幹細胞の網膜への侵入は認められなかった。神経幹細胞は、一過性虚血負荷眼に移植されると障害網膜に統合され、ニューロンに分化することが示された。 更に、in vitroにて網膜組織が神経幹細胞の神経あるいはグリア細胞への分化を誘導し得るかどうか検討した。上記の神経幹細胞を胎生20日のラット網膜と共培養した。胎児網膜組織と幹細胞は3.0ミクロン径のポアサイズのメンブレンにて隔離した。対照として神経系幹細胞のみの単独培養を同時に行った。培養1週間後に、種々のニューロンおよびグリアのマーカーを用いて神経系幹細胞の免疫染色を行ない、組織学的検索を行った。胎児網膜組織と共培養された神経系幹細胞は、そのほとんどがニューロンもしくはグリア様の形態を呈し、対照との比較において細胞増殖が抑制されていた。また、免疫染色の結果、共培養された神経系幹細胞はニューロン及びグリアのマーカーを発現していた。一方、対照群では神経系幹細胞のニューロンあるいはグリアヘの分化の促進は認められなかった。胎児ラット網膜は、神経系幹細胞をニューロン及びグリアに分化誘導する拡散性因子を産生している可能性が示唆された。
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