1998 Fiscal Year Annual Research Report
角膜の発生過程と創傷治癒過程における透明性獲得機構の解明
Project/Area Number |
10770945
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
野崎 実穂 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (00295601)
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Keywords | 角膜発生 / グリコサミノグリカン / 角膜散乱光強度 / 前眼部撮影観察装置 / 眼瞼発生 / 小眼球 / ケラタン硫酸 |
Research Abstract |
Jcl:ICRマウスを用いて、胎生15日、閉瞼する胎生16日から開瞼する生後14日までの角膜を、前眼部撮影観察装置を用いて、その散乱光強度を測定し、角膜の透明性を定量化した。散乱光強度は発生が進むにつれ減弱していったが、特に胎生18日と生後1日、生後1日と生後7日の間に有意な差がみられた。一方、同マウスの角膜実質内のグリコサミノグリカン分子種を酵素消化法で組織化学的に検討したところ、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、そしてケラタン硫酸の順で変化していくことが認められた。また、走査電子顕微鏡で角膜発生過程を観察したところ、閉瞼する胎生16日から角膜実質のコラーゲン走行が密になり、胎生18日以後コラーゲン走行はさらに緻密になっていた。角膜のコラーゲン間には種々のグリコサミノグリカンが存在し、相互作用をおこしていることが知られている。胎生18日から有意に散乱光強度が減弱し、角膜実質のケラタン硫酸が増加し,角膜実質のコラーゲン走行が緻密になっていたことから、発生過程において角膜が透明性を獲得するのは、胎生18日であり、その過程で最も関与しているのはケラタン硫酸の増加と解明できた。ケラタン硫酸はデルマタン硫酸やコンドロイチン硫酸より短いため、コラーゲン線維走行をより密にでき、角膜が透明性を獲得できるものと考えられた。また、発生過程における角膜の透明性について眼瞼の果たす役割を解明するために、先天異常の小眼球マウスの眼瞼発生過程を組織学的および組織学的に検討したところ、瞼裂幅、閉瞼時期、開瞼時期には正常マウスと差はないが、組織化学的にはグリコサミノグリカン分子種レベルで発生の遅れがあることが証明された。今後、胎生期に閉瞼しないopen eyelidマウスの角膜や、角膜創傷治癒過程でのグリコサミノグリカン分子種やTGF-βの変化について検討する予定である。
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