1999 Fiscal Year Annual Research Report
角膜の発生過程と創傷治癒過程における透明性獲得機構の解明
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10770945
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
野崎 実穂 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (00295601)
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Keywords | 角膜創傷治癒 / グリコサミノグリカン / デルマタン硫酸 / ケラタン硫酸 / コンドロイチン硫酸A / C / Peters奇形 |
Research Abstract |
白色家兎を用い、角膜に深さ約200μmの切創を作製し、創作製直後、3時間、6時間、12時間、3日、7日、4週、2か月および3か月後に屠殺し、直ちに眼球を取り出し、4%パラホルムアルデヒト・0.1%グルタールアルデヒド・リン酸塩緩衝液で固定し、パラフィンに包埋して厚さ3μmの連続切片を作製した。水和後の切片に一般染色法としてヘマトキシリン・エオジン染色、硫酸基含有酸性複合糖質検出法として増感高鉄ジアミン(S-HID)染色を行った。また、S-HID染色に先立ってchondroitinase B(ChaseB)消化法、Chase B-testicular hyaluronidase二重消化法、またはChase ABC、Chase ABC-keratanase二重消化法を併用して、光学顕微鏡で観察した。角膜創傷治癒過程で、角膜実質創周囲の主要なグリコサミノグリカン分子種は、創作製7日後ではコンドロイチン硫酸A/Cであった。そして、創作製後2週後にはデルマタン硫酸が出現し、創作製1か月後からケラタン硫酸がみられた。角膜創傷治癒の再構築過程の角膜実質における主要なグリコサミノグリカン分子種は、経時的に低分子量のものへと変化した。この結果は、昨年の角膜発生過程のグリコサミノグリカンの動態と同様であった。この、グリコミノグリカンの動態により、角膜実質のコラーゲン線維がより緻密に配列し、角膜は透明性を獲得すると考えられた。 また、臨床的に前眼部形成異常のひとつで角膜混濁をきたすPeters奇形について、合併する緑内障との観点から検討した。Peters奇形を合併していた緑内障症例では、術後の眼圧下降により角膜のびまん性混濁だけでなく角膜中央部の混濁も軽減したことから、眼圧を下降させることにより、高眼圧が原因の角膜実質浮腫が消失するだけでなく、欠損していない部の健全な内皮細胞が機能できるようになり再構築機転が働くため、Peters奇形による角膜中央部の混濁も軽減するものと考えられた。
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