1998 Fiscal Year Annual Research Report
口腔扁平上皮がんの放射線感受性に関与する遺伝子の同定
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10771025
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安田 元昭 北海道大学, 歯学部, 助手 (90239765)
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Keywords | 口腔扁平上皮がん / 放射線感受性 / growth factor |
Research Abstract |
腫瘍細胞の放射線感受性を検討する上で、これまで多くの研究が行われてきているが、主として腫瘍細胞に対する照射および、腫瘍細胞における遺伝子発現が検討されてきた。しかしながら、一般臨床においては、腫瘍組織のほか周囲正常細胞にも照射は行われ、正常組織にも照射による遺伝子発現の変化が生じているはずである。正常組織より放出されるタンパク質が腫瘍細胞に大きな影響を与えているのは予想に難くなく、この腫瘍一間葉間の相互作用が腫瘍細胞の放射線感受性に影響を及ぼすと考えられる。 第一段階として、ヒト正常線維芽細胞を用いて検討した。MRC5(ヒト正常線維芽細胞)にコバルト照射装置にて10Gyの照射を行い、Northern blottingにて数種の遺伝子についてメッセージレベルの発現を、HGF,ファイブロネクチンについて検討した。照射24時間後には両遺伝子の明らかな発現の上昇が認められた。イムノアッセイによりタンパク質レベルでの発現上昇も同時に確認された。 HGFは多様な生物活性を持つタンパク質であり、肝細胞の再生、その他肺、腎細胞の再生に関与しこれら臓器の創傷治癒に正の働きがあることが示されている。また、ファイブロネクチンは細胞接着において大きな役割を担っており、上皮細胞の遊走促進を行っていると思われる。これらのことがら、ある照射条件においては、正常結合組織に放射線照射により腫瘍細胞を生存の方向に導く可能性のあるタンパク質の発現亢進が起こってる可能性が示唆された。 次年度は、腫瘍細胞自体の照射による遺伝子発現変化を中心に検討を進める予定である。
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