1998 Fiscal Year Annual Research Report
修復用レンジと象牙質の接着におけるアスパラギン酸誘導体の作用機序の解明
Project/Area Number |
10771047
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
伊東 孝介 岡山大学, 歯学部, 助手 (50294418)
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Keywords | 象牙質 / 接着 / 樹脂含浸層 / アスパラギン酸誘導体 |
Research Abstract |
修復用レジンと象牙質の接着においてアスパラギン酸誘導体であるN-acryloyl aspartic acid(N-AAsp)の作用機序を解明するために、N-AAspとアパタイトの反応生成物および反応生成物が接着に及ぼす影響について検討した。反応物をFT-IR分析したところ、1100〜900cm^<-1>にプロードのピークを認めた。このピークはリン酸基のピークに相当すると推測された。他には1650、1550、1530cm^<-1>にN-AAsp由来のピークが観察された。以上のことより、N-AAsp水溶液で象牙質を処理し、アパタイトを脱灰するとN-AAspとリン酸カルシウムの塩が生成していると考えられた。しかしFT-1Rで得られたピークは非常にプロードであるため反応塩が第2リン酸カルシウム(DCPD)であるか第3リン酸カルシウム(TCP)であるかの同定は困難であった。そこで直接DCPDとN-AAspを反応させその反応物のFT-IR分析を行ったところ、N-AAspとアパタイトとの反応塩のピークと一致した。よってN-AAsp水溶液で象牙質を処理して表層のアパタイトを脱灰すると、処理歯面にはN-AAsp、DCPDおよびN-AAspとDCPD反応塩が生成している可能性が非常に高いと考えられた。 次に、DCPDをN-AAsp水溶液に添加し、レジンと象牙質の接着界面に生成する樹脂含浸層に及ぼす影響について検討した。20wt%N-AAsp処理では接着界面に約2μmの幅の樹脂含浸層が生成し接着強さは8.9±4.5MPaであった。5wt%DCPD-20wt%N-AAsp処理では0.5μmの幅の樹脂含浸層が生成し、接着強さは10.8±3.0MPaであった。すなわち、DCPDの添加により樹脂含浸層の構造は変化するものの、接着強さは低下しなかった。 今後、添加したDCPDのN-AAsp溶液中での結晶性、樹脂含浸層の構造変化を詳細に検討することにより、樹脂含浸層のアパタイトによる強化が可能になるのではと考えられた。
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