1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10771081
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 光由 広島大学, 歯学部, 助手 (50284211)
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Keywords | 高齢者 / 嚥下 / 咬合 |
Research Abstract |
加齢に伴う嚥下反射の低下は,口腔相から咽頭相への送り込みの遅延によるところが大きいことが報告されている.一般に,口腔相から咽頭相への移行時には上下歯が接触するといわれていることから,高齢者においては咬合の喪失が口嚥下機能に何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられる.そこで,高齢者の嚥下反射の遅延に咬合の影響があるか否かを明らかにする目的で,インフォームド・コンセントが得られた神経学的異常およびその既往を認めない70歳以上の高齢無歯顎者6名(男性2名,女性4名)ならびに有歯顎者3名(男性1名,女性2名),さらに対照として成人有歯顎者6名(男性3名,女性3名,平均年齢24.3歳)を対象として,10倍希釈バリトゲンゾルl0ml嚥下時の動態をX線映画装置を用いて比較検討した. その結果,無歯顎者の無歯顎時6名中5名に1回以上の喉頭流入が認められ,これらの状態は総義歯の装着によってもほとんど改善されなかった.一方,有歯顎者で喉頭流入を認めたのは1名で1回のみであった.口腔通過時間は,無歯顎者の無歯顎時において有歯顎者や対照者に比べて有意に長くなり(p<0.05),高齢無歯顎者では,口腔相から咽頭相への送り込みの遅延が大きいことが示唆された.また,咽頭通過時間は対照者において有意に短く(p<0.05),従来の報告とよく一致していた. 本年度は限られた被験者でしか検討できなかったものの,高齢者の嚥下反射の遅延に咬合の喪失が影響することが示唆できた.来年度には,さらに被験者を増やし,高齢者の咬合と嚥下動態との関係をより詳細に明らかにすることで,高齢者の誤嚥防止とQOL向上に関する歯科補綴学的示唆を導く予定としている.
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