1999 Fiscal Year Annual Research Report
歯周組織細胞におけるテロメア長と歯周病原性細菌由来リポ多糖に対する応答性の変化
Project/Area Number |
10771221
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
河合 治 北海道医療大学, 歯学部, 助手 (20260820)
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Keywords | 加齢 / 歯肉線維芽細胞 / インターロイキン6 / プロスタグランジンE_2 |
Research Abstract |
近年,歯周炎の発症と進行に加齢が影響している可能性が示されている。本研究では11名の若年者,12名の高年者から採取した歯肉より分離・培養した歯肉線維芽細胞(HGF) を用いて,加齢による細胞応答性の変化をインターロイキン6(IL-6)産生およびプロスタグランジンE_2 (PGE_2)産生を指標として検討した。まず,被験者の歯肉から分離したHGFを7代継代培養した。7代継代細胞をリポ多糖(LPS)あるいはインターロイキン1β(IL-1β)で刺激して細胞増殖の変化およびIL-6産生量の変化を測定した。LPSあるいはIL-1βで刺激しても若年者および高年者とも細胞増殖の速度に大きな変化は認められなかった。また,若年者の方が,細胞数がプラトーに達するまでの時間は短かった。高年者については,LPS刺激群,IL-1β刺激群いずれの細胞においても,IL-6産生量は増加したが,IL-1β刺激群の細胞では有意に高い産生量を示した。この結果を踏まえて,刺激剤として細胞応答性の良いIL-1βのみを選択し継代培養によるIL-6およびPGE_2,産生量の変化を検討した。若年者の細胞では継代培養によりPGE_2,IL-6産生量が減少し,PGE_2,産生阻害剤であるインドメタシン添加によりPGE_2,IL-6産生は阻害された。この結果から,若年者の細胞においては細胞自身が産生するPGE_2によりIL-6産生がup-regulateされている可能性が示唆された。一方,高年者の細胞ではIL-6産生に関するPGE_2の関与は,明瞭ではなかった。これは,高年者群の7代継代細胞では,インドメタシン添加によってPGE_2産生が阻害されたにも関わらずIL-6産生が阻害されない細胞が一部に認められたことによると考えられる。本研究では,IL-1β刺激後のHGFからのPGE_2産生は継代培養により減少し高年者では若年者に比べて低い産生量を示したことから,加齢によりPGE_2産生は低下することが示唆された。しかし,IL-1β刺激後のHGFからのIL-6産生に関しては,細胞毎で調節機構が異なるため,加齢により一定の変化が認められない可能性も考えられた。また,歯周炎と加齢の関係をさらに詳細に解析するために,今後は研究に使用する歯肉線維芽細胞の数をさらに増やす必要性も考えられた。
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