1998 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経細胞死における内因性活性酸素産生物質の役割
Project/Area Number |
10771282
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
香月 博志 京都大学, 薬学研究科, 助教授 (40240733)
|
Keywords | 神経細胞死 / 内因性神経毒 / 活性酸素 / アポトーシス / アミノ酸輸送 / ヨード酢酸 / エネルギー代謝 / 3-ヒドロキシキヌレニン |
Research Abstract |
中枢神経変性疾患において特定の脳部位の神経細胞が変性・脱落を起こす原因の一つとして、内因性の神経毒性物質が脳内に蓄積することが引き金となるケースが考えられる。申請者は、トリプトファンの代謝過程で生成する中間産物である3-ヒドロキシキヌレニン(3-HK)が、非常に低濃度で神経毒性を発揮することを既に報告した。本研究では特に3-HKの毒性機序の解明を中心として、培養線条体細胞を用いて検討を行った。(1)3-HKと他のトリプトファン代謝中間産物との毒性の比較を行ったところ、3-HK以外に3-ヒドロキシアントラニル酸にも弱いながらも毒性が認められ、両化合物の共通構造であるo-アミノフェノール構造が毒性発現に重要であることが示唆された。また3-HKによる細胞死はタンパク質合成あるいはRNA合成の阻害薬によって抑制されること、核の凝集やDNAの断片化といったアポトーシスと一致する所見を呈することを明らかにした。さらに、3-HK毒性は過剰の中性アミノ酸の共添加によって抑制されることから、中性アミノ酸輸送体が3-HKの細胞内取り込みの主経路であることが推定された。(2)解糖系酵素GAPDHの阻害薬であるヨード酢酸を低濃度で同時適用したところ、3-HKの毒性が増強される傾向が認められた。いくつかの神経変性疾患においては脳内エネルギー代謝レベルが低下していることが知られており、3-HKが神経細胞に傷害を与えやすい状況になっていると推察される。以上の結果は3-HKが中枢神経変性疾患における病態形成に関与する可能性を更に支持するものである。
|
-
[Publications] Okuda,S.et al.: "3-Hydroxykynurenine,an endogenous oxidative stress generator,causes neuronal cell death with apoptotic features and region selectivity." J.Neurochem.70・1. 299-307 (1998)
-
[Publications] Izumi,Y.et al.: "Oxygen deprivation produces delayed inhibition of long-term potentiation by activation of NMDA receptors and nitric oxide synthase." J.Cereb.Blood Flow Metab.18・1. 97-108 (1998)
-
[Publications] Izumi,Y.et al.: "β-Hydroxybutyrate fuels synaptic function during development:histological and physiological evidence in rat hippocampal slices." J.Clin.Invest.101・5. 1121-1132 (1998)
-
[Publications] Katsuki,H.et al.: "A potential role of Ras-mediated signal transduction for the enhancement of depolarization-induced Ca^<2+> responses in hippocampal neurons bybasic fibroblast growth factor." Dev.Brain Res.111・2. 169-176 (1998)
-
[Publications] 香月博志 他: "線条体由来非蛋白性物質によるドパミンニューロン死の制御" 別冊・医学のあゆみ『神経細胞死制御』(三須・赤池編)、医歯薬出版, 5 (1998)