1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10771299
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
能勢 光彦 名古屋市立大学, 薬学部, 講師 (60228327)
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Keywords | 消化管粘膜免疫系 / 漢方方剤 / IgA産生 / 八味地黄丸 / 消風散 / 治頭瘡一方 / 温清飲 / 多糖1本 |
Research Abstract |
近年、その特異な機能で注目を浴びている消化管粘膜免疫系が、経口投与を原則とする漢方方剤の作用点の一つになり得るかどうか検討することを目的に、本年度は粘膜免疫系の防御機構の一つである分泌型IgA産生への各種漢方方剤の影響を検討した。八味地黄丸(0.1、0.2、1.0g/kg)を2日間経口投与し、1、4、7、10日後にパイエル板細胞を採取した。細胞はLPS存在下72時間培養し、抗原非特異的ならびに抗原特異的なIgA産生細胞数をPlaque forming cell assayにて算定した。また、粘膜免疫系に影響を及ぼすことの知られる羊赤血球(SRBC)を対照に用いた。SRBCの4日、5日前投与により、SRBCに対する抗原特異的なIgA産生細胞数は約4倍程度に上昇したが、抗原非特異的なIgA産生細胞数は全投与期間を通して変化しなかった。これに対し、八味地黄丸投与群では抗原非特異的なIgA産生細胞数にどの投与量においても約1.5倍程度のIgA産生細胞数の上昇が認められ、同時にSRBCに対する抗原特異的なIgA産生細胞数も約2倍に上昇していた。さらに、この活性中心を明らかにする目的で、八味地黄丸をエタノール沈殿法により高分子と低分子の二画分に分けて同様の検討をしたところ、この作用は高分子画分にのみ認められ、この画分の化学分析から粗多糖体が本活性を担っていることが示唆された。これらのことから、八味地黄丸の示したIgA産生細胞数の上昇機序は、多糖体などによる直接の、ポリクローナルなB細胞の活性化によることが推察された。また、IgA欠損患者の多くにアレルギー疾患が高頻度に出現することなどから、IgAのアレルギー疾患での重要性が考えられている。そこで、抗アレルギー作用を持つとされる漢方方剤(消風散、治頭瘡一方、温清飲)についても同様の検討を行ったところ、それぞれに作用力価は異なるが、すべてIgA産生細胞数を上昇させた。アレルギー疾患でのIgAとIgEのバランスにどのような影響を及ぼすかに興味が持たれる。
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