1999 Fiscal Year Annual Research Report
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10771299
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
能勢 充彦 名古屋市立大学, 薬学部, 講師 (60228327)
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Keywords | 消化管粘膜免疫系 / 漢方方剤 / 経口免疫寛容 / アジュバント関節炎 / 抗体産生 / 消風散 / 温清飲 / 治頭瘡一方 |
Research Abstract |
昨年度の検討で、漢方方剤は消化管粘膜免疫系(GALT)の持つ防御機構の中でfirst lineと考えられる、抗原の生体内への侵入を制限するための分泌型lgA産生を増加させる作用を持つことを明らかにした。本年度は、GALTのもう一つの機能である経口免疫寛容の獲得に与える漢方方剤の影響について検討した。経口免疫寛容は「抗原性の強い蛋白質を経口ルートで投与したとき、その後の当核抗原に対して全身の免疫反応が抑制される」という現象で、最近ではリウマチ等の自己免疫疾患の治療に応用されはじめている。本研究では卵白アルブミン(OVA)を抗原として用い、この経口投与により、次にOVAを非経口的に投与してもOVAに対する抗体産生が生じないという現象やII型コラーゲンを経口投与しておいたラットではアジュバント関節炎の発症抑制、重病化・進展抑制が観察されるという系を用いて、漢方方剤を経口免疫寛容誘導前7日間経口投与した際の寛容獲得への影響を調べた。その結果、消風散、温清飲、治頭瘡一方の中で、治頭瘡一方が抗体産生抑制を増強する、すなわち経口免疫寛容の獲得を増強する作用を持つことが判明し、また温清飲がラットアジュバント関節炎モデルでII型コラーゲンによる発症の遅延、軽減、症状改善を更に増強した。温清飲単独ではアジュバント関節炎を抑制しないことから、これも経口免疫寛容の獲得増強であると考えられた。これらの詳細なメカニズムは現在のところ明らかではないが、経口免疫寛容の獲得に際し、アジュバントとして応用できる可能性が見い出され、漢方方剤の新たな作用点が明らかになったと考えられる。
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