1998 Fiscal Year Annual Research Report
心筋梗塞後不全心の熱ショックタンパクの誘導能と薬物治療の効果に関する検討
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10771304
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
田野中 浩一 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (50188398)
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Keywords | 熱ショックタンパク / 心不全 / 心機能 |
Research Abstract |
Wistar系雄性ラットの左冠状動脈を結紮することにより心筋梗塞を作製した。この心筋梗塞ラットは術後8週目に、心臓のポンプ機能を表す直接的な指標の心拍出量が低下する典型的な低拍出量性心不全症状を呈した。この心拍出量の他にも左心室拡張末期圧の上昇、心筋梗塞を免れた生存心筋組織の肥大などヒトの心不全症状を再現する知見が得られた。 まず、正常ラットの心臓を摘出し、Langendorff法で定流量灌流を行った。摘出心臓を42℃、15分間の高温灌流し(高温負荷:ヒートショック)、さらに37℃の正常温度で灌流を行うと、ヒートショック後6時間目をピークにして熱ショックタンパクのHSP72およびHSP73のタンパク量が増加した。一方、心不全ラットの摘出心臓にヒートショックを行うと、HSP72およびHSP73の誘導量はヒートショック処置を施さなかった正常温度での灌流心臓のそれらよりわずかに高い程度にとどまった。すなわち、ヒートショック後、心筋梗塞後不全心ではHSP72およびHSP73はほとんど誘導されないことが明らかにされた。 次に、ヒートショック後の灌流心臓の心機能について検討した。不全心のヒートショック後の心機能は正常心臓あるいはヒートショックを行わなかった不全心の心機能よりも低値であった。これらの結果より、心不全ラットの心臓ではヒートショックなどの生体に障害を誘発するストレスに対してHSP72およびHSP73のようなストレスタンパクの発現能が低下しているため、ストレス誘発性障害に対する抵抗能あるいは適応能が低下すると予測された。
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