1998 Fiscal Year Annual Research Report
ワイル病病原体Vプトスピラのゲノム解析および臨床診断への応用研究
Project/Area Number |
10771305
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
高橋 幸江 福山大学, 薬学部, 助手 (40236328)
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Keywords | Vプトスピラ / ワイル病 / ゲノム解析 / PCR |
Research Abstract |
レプトスピラはワイル病の病原体で医学的に重要な細菌であるにもかかわらず、分子生物学的研究は少ない。本研究ではこのワイル病病原体として日本で発見された株について染色体のサイズ、物理地図ならびに遺伝子地図を明らかにした。すなわちこの菌の染色体は約4.6メガ塩基対の環状構造で、細胞内にはほかに環状で350キロ塩基対の分節染色体を有していた。これらの結果は家畜レプトスピラ症病原体のそれと同じであったが、遺伝子座についてはそれぞれの株に特徴的であり、レプトスピラ染色体では遺伝的組換えが頻繁に起こるものと推察された。またレプトスピラでは大腸菌など一般の細菌と異なりリボソームRNA遺伝子が染色体上に分散して存在していることはすでに我々が報告しているが、このことを本研究でも再確認した。そのうちの5SrRNA遺伝子は他の遺伝子が2個であるのに対して一個で、染色体複製領域と考えられる領域の近くに位置していたのでこの遺伝子近傍の塩基配列を解明した。 5SrRNA遺伝子を含む19キロ塩基対の配列を決定したがこの範囲に複製開始点は認められなかった。またこの株の染色体を制限酵素(KpnI)で切断すると特徴的な4.8キロ塩基対のバンドが得られるのでこれについても検討した。この断片は染色体の一定の領域に繰り返し存在する (繰り返しは約20コピー)こと、他の病原レプトスピラ種に広く分布することを明らかにした。そこでこの繰り返し配列をターゲットとしたPCRを行って、この配列がレプトスピラ症の迅速診断プローブとなりうるか検討した。その結果、通常の染色体上の遺伝子を目的とするPCRに比べて10倍の感度で検出でき、かつ病原性種に特異的であったので、簡便で迅速なレプトスピラ感染診断に有望であることが明らかになった。
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