1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10771323
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小椋 康光 千葉大学, 薬学部, 助手 (40292677)
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Keywords | 銅 / 亜鉛 / ICP-MS / スペシエーション / シャペロン / チオモリブデート / メタロチオネイン / マクラーマウス |
Research Abstract |
細胞内において銅(Cu)および亜鉛(Zn)の輸送の機構を明らかにすることを目的として、本年度は肝臓内における主要なCu結合蛋白質の同定と、生体内でCuと選択的に反応するキレート剤の効果の検討を行った。 昨年度は成熟雄性ラット肝臓可溶性画分中に存在する主要なZn結合蛋白質が炭酸脱水酵素III(CAIII)であることを明らかにしたが、本年度はCu結合蛋白質の同定を行うにあたり、Cu代謝に関与すると考えられる遺伝子の先天性異常や遺伝子改変動物が利用可能なマウスを用いて検討を行った。 マウス肝臓中銅結合蛋白質を同定するため、安定同位体標識したCuを肝可溶性画分中に添加したところ、3種の銅結合蛋白質が確認された。そのうち最も存在量が多く、低分子なものについて、同定を行ったところメタロチオネイン(MT)のイソ蛋白質の1つであるMT1であることが明らかとなった。一方、Cu欠乏食でマウスを飼育すると、肝臓内で最も存在量の多いCu結合蛋白質であるCu,Zn-スパーオキシドディスムターゼ(SOD1)に結合するCuの量に変化はないが、MT-1の存在量が増加することが明らかとなり、MT-1がCu欠乏時に細胞内のCuの制御に何らかの役割を果たしているものと考えられる手がかりを得た。 選択的Cuキレート剤であるテトラチオモリブデート(TTM)が、細胞内のCuの輸送体であるCuシャペロンと反応しえることを既に報告したが、さらに生体内でCuと反応したTTMの代謝的運命を検討した。生体内でCuと反応したTTMはCuとの複合体を形成するが、生体内でその複合体が分解されることなく、体外へ排泄されることが明らかとなった。つまりTTMと反応したCuをすべて生物学的に利用不可能なCuとなるため、Cuの代謝機構を検討するうえで極めて有用なツールと成り得ることが明らかとなった。
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[Publications] Y. Ogura: "Comparative mechanism and toxicity of tetra- and dithiomolybdates in the removal of copper"J. Inorg. Biochem.. 75. 199-204 (1999)
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[Publications] K.T. Suzuki: "Identification of the zinc-binding protein specifically present in male rat liver as carbonic anhydraseIII"Chem.-Biol. Interact.. 122. 185-197 (1999)
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[Publications] Y. Komatsu: "Excretion of copper complexed with thiomolybdate into the bile and blood in LEC rats"Chem.-Biol. Interact.. 124. 217-231 (2000)
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[Publications] Y. Ogura: "Metabolic fate of the insoluble copper/tetrathiomolybdate complex formed in the liver of LEC rats with excess tetrathiomolybdate"J. Inorg. Biochem.. 78. 123-128 (2000)