1998 Fiscal Year Annual Research Report
移動の援助技術方法の違いが看護者に及ぼす身体的負担度に関する研究
Project/Area Number |
10771367
|
Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
柴田 しおり 神戸市看護大学, 看護学部, 助手 (70254480)
|
Keywords | 体位変換 / 生体負担 / 心拍数 / 筋電図 |
Research Abstract |
本研究の目的は、移動の援助技術の基本的な項目について、従来的な方法と力学的根拠を踏まえた新しい方法が実施者の生体に及ぼす影響を主に生理学的視点から評価・比較し、得られた結果から技術指導への活用を検討することである。測定参加の同意を得た18〜20才の女性12名(体位変換・移動の援助技術に関する知識・経験のない者)を対象に、「仰臥位から長座位への移動」について従来的な方法(C試行)と紙屋らによって開発された方法(E試行)を教授した後、ランダム順にそれぞれの方法を3秒間の休憩を挟んで20回繰り返し行わせた。C試行は両腕で後頚部と腰背部を支持し上体を起こす方法であり、E試行は左腕を後頚部に回し肘を支点として半側臥位にした後、右腕を支点にして模擬患者の上半身を弧を描くように起こす方法である。その時の心拍数(HR)及び左僧帽筋、左上腕二頭筋、右上腕二頭筋、左脊柱起立筋、左大腿直筋の筋電図(EMG)を測定した。また、EMGは、各筋ごとに1回づつに筋電図積分値(iEMG)を算出した。 全身的負担度の指標として測定したHRは、E試行に比べC試行では統計学的に有意に高値を示した。この結果から、E試行に比べC試行の作業強度が高かったと考えられた。局所的負担度の指標として測定したiEMGは、右上腕二頭筋および左脊柱起立筋においてE試行よりC試行は統計学的に高値を示した。C試行では脊柱起立筋への負担度が大きいと考えられ、腰痛と関連する可能性が示唆された。一方、左大腿直筋ではC試行の方がE試行より低値であり、E試行では下肢大筋群を有効に使用することで上肢筋群の負担を軽減させていると考えられた。また、C試行においてのみ、左僧帽筋および左上腕二頭筋で初期値(2〜4回目)に対する終期値(15〜20回目)のiEMGの増大が認められ、左上半身の筋群に偏って筋疲労が生じていた。
|