Research Abstract |
在宅障害児の小学校就学前後における母親の養育体験,および就学に関与している専門家の介入の実態を明らかにすることを目的に,障害児母子への参加観察と半構成的面接および専門職への聞き取り調査を行なった.昨年度,母親の養育体験を児の障害の認識から就学準備期まで4期に分け報告したが,継続して《就学後の時期》の体験を分析した.その結果,母親は就学に伴う分離に不安を抱きながらも生活の変化に適応し,[その子なりの成長発達を捉え,自己の選択を評価する]とともに,[児の将来を見通して養育する]ようになっていた. 一方,就学前後に関与している専門職として,療育施設の園長,保健婦,保育士,医師,教育委員会,教員(特殊学級および養護学校,教育研究所)を対象に個別面接を行なった.障害児の就学に関しては,S市ではまず教育研究所(教員免許のある職員と心理判定員)が教育相談を行ない,児の状態の観察と把握および家族の意向を確認している.さらにその資料をもとに,教育委員会が就学指導委員会に就学相談を依頼し,家族と児への面接後,就学判定を出している.療育施設に通園している場合は,保健婦や保育士など身近な専門職が相談窓口になることも多く,今後の連携のあり方として就学判定と家族の意向が違う場合は,現況では教育委員会と家族のみの話し合いであるが,療育機関など児をとりまく多職種が話し合える場を望む声があった.就学前の通園施設では,比較的他職種と連携をとっていたが,就学後の学校では主に母親を介して情報を得る位で,他職種との連携は児の訓練に関することのみであった.教育専門職からは,障害児教育の制度の改正を第1に望む声が多かった.医療的ケアが必要な児も多く,日々の生活に保健・医療が切り離されないにもかかわらず,教育現場には教員しかおらず,他職種との連携があればよいとは感じながらも,教員が孤軍奮闘している現実が明らかとなった.
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