1998 Fiscal Year Annual Research Report
有酸素性作業能力とそのトレーニング効果を決定する遺伝的な要因の解明-ミトコンドリアDNAの変異に注目して
Project/Area Number |
10780009
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮崎 りか (相馬 りか) 筑波大学, 体育科学系, 助手 (20292542)
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Keywords | 有酸素性作業能力 / ミトコンドリア / ミトコンドリアDNA / 素質 / 遺伝 / 細胞培養 |
Research Abstract |
組織での酸素消費能力は、主にミトコンドリアの密度により影響されることが知られているが、ミトコンドリアの電子伝達系の酵素自体の機能については、まだ明らかになっていない。ミトコンドリアの電子伝達系の酵素群は、核DNAとミトコンドリアDNA(以下mtDNA)の両方にコードされているが、ここで、mtDNAは、最大酸素摂取量(以下Vo_2max)と同様に母系遺伝すること、そして、トレーニングしていない一般健常男性に3いて、比較的VO_2maxの高い者にはmtDNAに特異的な変異がみられる傾向にあることなどから、本研究では、mtDNAの違いがミトコンドリアの電子伝達系酵素群の機能に影響を及ぼし、その結果、細胞レベルの酸素消費にばらつきをもたらし、ひいては全身レベルでの有酸素性作業能力になんらかの影響を及ぼしているかどうかを明らかにすることを目的とした。 一般健常男女7名および持久運動種目選手(国内大会上位入賞者)男女5名から得た血小板を、エチジウムブロマイド処理によって、mtDNAが消失したHeLa細胞に融合させ、2、3カ月培養した。この処理によってできた融合細胞のミトコンドリアの電子伝達系酵素群は、被検者由来のmtDNAとHeLa細胞由来の核DNAによりコードされる。この細胞1×10^7個あたりの酸素消費量を37℃において測定し、各被検者のmtDNAがコードしている電子伝達系の酵素群の機能の個人差を一般健常人と持久運動種目選手で比較した。 融合細胞の酸素消費量は、持久運動種目選手群では17.23±4.47nmol/min/ml/1×10^7cell、一般健常人では、16.89±5,34nmol/min/ml/1×10^7cellで、両群間に有意な差はみられなかった。また、VO_2maxと、細胞の酸素消費量との間にも有意な相関はみられなかった。以上の結果から、本研究では、電子伝達系酵素群の機能と、全身の有酸素性作業能力との関連を明らかにすることはできなかった。したがって、電子伝達系酵素群の機能自体は、全身の有酸素性作業能力を規定する要因としては大きくはないと考えられる。
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