1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10780018
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
布目 寛幸 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 講師 (10270993)
|
Keywords | 車椅子バスケットボール / 脊髄損傷者 / ボール投能力 / DLT / 力学解析 |
Research Abstract |
障害者のスポーツ競技に対するバイオメカニクス的知見は数少ない。本研究は車椅子バスケットボールにおいて競技者の種々の能力を客観的な指標から評価することを試みた。本年度は車椅子バスケットボールにおいて極めて重要な要素あるにも関わらず、その定量的なデータが限られているボールの投能力をとりあげ、重度障害者を対象に3次元的に定量化することで上肢の機能不全が動作に及ぼす具体的な影響をkineticな観点から明らかにした。 ボール、手部、前腕部、上腕部からなるリンクセグメントモデルを定義し、上肢各関節が発揮する関節トルク、パワー、正の仕事量を算出した結果、重度障害者は肩関節外転(22.7±2.0vs.42.9±2.5Nm)と手関節屈曲(7.7±4.0vs.13.1±2.4Nm)のピークトルク、手関節屈曲トルクよる正の仕事量(2.2±0.9vs.7.9±2.9j)が健常者に比べて有意に低い反面、肩関節の関節間力に由来する正の仕事量(14.3±4.4vs.5.4±2.1J)が大きい結果となった。この結果から重度障害者は上肢関節動作(肩関節外転、手関節屈曲)の機能不全を補償する為に体幹部などに残存する機能を動員して投動作を行っていることが考えられ、このことから健常者には非合理的にも見える重度障害者の投動作が機能不全を補償しパフォーマンスを高める為に学習された動作であることが示唆された。重度障害者のバスケットボール投動作のトレーニングの具体的な指標を方向性を示す資料であると考えられる。この補償作用がどの程度までの障害レベルにまで観察されるかについては障害レベルの異なる被検者を対象に研究を継続している段階である。
|