1999 Fiscal Year Annual Research Report
運動の学習・記憶の脳内メカニズム:小脳プルキン細胞におけるグルタミン酸受容体のリン酸化反応
Project/Area Number |
10780045
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
柳原 大 豊橋技術科学大学, 体育・保健センター, 助教授 (90252725)
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Keywords | 歩行 / 小脳 / 運動学習 |
Research Abstract |
小脳の神経回路において、プルキンエ細胞は平行線維と、下オリーブ核からの登上線維とを介して興奮性のシナプス入力を受け、この二つの入力が同期して起きた時、平行線維・プルキンエ細胞間のシナプスの伝達効率が長期間低下する長期抑圧が生じる。この長期抑圧は運動学習の細胞レベルでの基礎過程として考えられている。ところで、長期抑圧の発現においては、プルキンエ細胞内のタンパクの燐酸化が必要とされると予想されている。小脳運動学習に伴ったプルキンエ細胞の燐酸化をantiphosphoserineのモノクローナル抗体を用いて標識することにより、その運動学習との関係を推測させるプルキンエ細胞を検出・マッピングすることができる。そこで、ネコの外乱歩行と外乱を加えない歩行の後で、動物を還流固定し、免疫組織化学を行った。結果として、外乱を加えない通常の歩行後においては、標識された細胞は非常に少数であったが、外乱歩行の後では小脳虫部・中間部の第IV、V葉に標識された細胞が多数認められた。プルキンエ細胞内のタンパク燐酸化として、最も可能性の高いタンパクはグルタミン酸受容体である。実際、グルタミン酸受容体の燐酸化部位は、最近詳しく調べられ、グルタミン酸受容体のサブタイプGluR2の696番のセリン残基の燐酸化と長期抑圧との関係が予測されている。そこで、この696番のセリン残基の燐酸化を特異的に標識するモノクローナル抗体を作成し、歩行の適応との関係を調べた。しかしながら、外乱を加え適応現象を生じた個体の小脳においても、また外乱を加えない歩行を行わせた個体の小脳においても、陽性な反応は観察されなかった。今後はグルタミン酸受容体の他のリン酸化部位との関係を検討する予定である。
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