1999 Fiscal Year Annual Research Report
高齢期における居住地移動の空間構造の解明とモデル化に関する研究
Project/Area Number |
10780050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田原 裕子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (40282511)
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Keywords | 高齢者 / 居住地移動 / 高齢人口移動 / 帰還移動 |
Research Abstract |
今年度は高齢期の居住地移勤について,行動論的なアプローチから,個人の意思決定過程を明らかにすることを目標に事例研究を行った.事例地域には,高齢者の転入(帰還)が予想される地域(沖縄県大宣殊村)と,高齢者の転出が予想される地域(岐阜県神岡町)を選定した. 大宣味村では帰還移動を切り口に調査をおこなった.帰還の意思決定にかかわる要因として,「故郷だから」「家を守るため」「親戚や友人がいる」などの情緒的な埋由はもちろんであるが,その背景には食費,住宅費,光熱費などの生活コストの削減による経済的なメリットがあることがあきらかになった. 神岡町では,豪雪地域に位置し,高齢者のみの世帯,被用者年金の受給世帯の割合が高いという待徴をもつ地域において,高齢者の転出が活発ではないのはなぜかという点を切り口に調査を行った.その結果,(子供と別居しても)住み慣れた場所を離れたくないという意識の背景には,持ち家がある(移動後に現在以上の居住条件を確保できない),田畑がある(食費の削滅効果,健康管理,近隣・親族とのコミュニケーションのきっかけ)などの要因があることがあきらかになった. 昨年度の研究で,他の先進国では高齢化の進展および社会保障制度の充実に伴って高齢人口移動が括発化してきたのに対して,日本ではそれはど顕著ではない状況が続いており,マクロレベルにおいて主要な移動流(main stream)は認められなことが明らかになった.今年度の事例研究によって得られた知見をもとに考えるならば,移動による経済的メリットの小ささ,あるいはデメリットをその要因として挙げることができる.今後は,大都市圏を発着地とした移動について事例研究を進めた上で,移動理由と移動空問に関して分析を進めていきたい.
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