Research Abstract |
今年度は妙高火山山麓を中心に野外調査を行った.その結果,妙高火山における大規模な山体崩壊(ca20ka)および火砕流噴火(6ka,4ka)に伴う泥流堆積物が確認された.さらにボーリング資料の解析から,下流の高田平野沖積層中にも,これらの噴火に伴う泥流堆積物が広く分布していることが確認された.このような大規模な泥流の襲来は,高田平野の古環境に大きな影響を与えた可能性がある.今後,これらの泥流の規模と分布を詳細に把握することを試みたい. また,妙高火山山麓白田切川流域において,4千年前以後にも,少なくとも4回の泥流発生事件が起きていることを確認した.これらの泥流と同時に起こった噴火の証拠は認められない.泥流の規模も,噴火に伴うものに比べるとはるかに小さく,堆積物の特徴(粒度組成,岩種組成)も異なる.おそらく1978年の泥流と同様に,不安定斜面の崩壊に伴って発生した泥流であると考えられる.さらに他の流域においても調査をすすめ,このような泥流の発生頻度を検討したい. また,6ka,4kaに妙高火山から噴出した火砕流堆積物は,下流に行くに従って,泥流堆積物に変化する.この変化は,漸移的で,判別の困難な部分があるが,粒度組成などの物理的な特徴の他に,グラウンドレイヤーや,火山豆石,パイプ構造など,火砕流に特有の堆積構造が認定の基準として有効であることがわかった.今後は,妙高火山山麓の火砕流堆積物と泥流堆積物について堆積地形の特徴や,分布の特徴と,構成粒子の形態や,堆積物の微細構造など,微視的な特徴の比較を行い,両者の認定の基準をさらに検討していきたい. 今年度は,このほか支笏火山周辺の火砕流二次堆積物に関する調査や,比較検討のために,浅間火山や有珠火山周辺に分布する一般的な泥流堆積物,火砕流堆積物,岩屑なだれ堆積物の観察を行った.
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