1998 Fiscal Year Annual Research Report
中・小規模天然ダムの決壊による河川の土砂移動と地形変化に関する研究
Project/Area Number |
10780066
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
島津 弘 立正大学, 地球環境科学部, 講師 (90251909)
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Keywords | 山地河川 / 天然ダム / 崩壊 / 土砂移動 / 段丘 / 河床上昇 / 手取川 / 十津川 |
Research Abstract |
崩壊堆積物が河川をせき止めて形成された天然ダムの形成・決壊と土砂移動・地形形成の関係を明らかにするために今年度は石川県の手取川上流と奈良県・和歌山県の十津川ー熊野川流域で調査を行った。手取川上流域では空中写真判読に基づき崩壊地分布と段丘分布図を作成した。十津川流域では、1889(明治22)年豪雨における天然ダム形成箇所を当時の記録と空中写真判読から明らかにした上で堆積物調査と河床、段丘地形の測量を実施した。結果は以下の通り。 手取川上流域には数多くの崩壊地が分布している。そのうち形態が明瞭ないくつかの崩壊地が1934年に形成されたものと推定される。手取川上流の本・支流には5段の段丘が分布し、そのうち高位から3段目が1934年に形成された谷底面、その下位の2段がその後の侵食過程で形成された段丘であると推定した。調査地域中央部付近の河床に分布する百万貫岩をはじめとする巨岩群は段丘が支流の宮谷川に形成された天然ダムの決壊にともなって運搬・堆積したものであると考えた。なお、宮谷川に沿う段丘が分布しないことから、谷底を埋積する土砂移動と巨岩を運搬した土砂移動は異なったプロセスによるものと考えられる。十津川およびその支流では1889年の豪雨時に30程度の天然ダムが形成された。これらは1つを除いて即時〜20日で決壊した。十津川流域には手取川に見られるような巨岩は分布しない。また、段丘が分布するものの、断片的で規模も小さい。分布の位置と堆積物の層相から、段丘堆積物は湛水時間が長いダムにおける決壊前のダム湖内の堆積により形成されたものと、比較的大きなダムの決壊がもたらした河床上昇によって形成されたものに区分される。以上のことから天然ダムの形成という同様の現象ではあるが、2つの流域では異なった土砂移動が生じたと推定される。
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Research Products
(1 results)