1998 Fiscal Year Annual Research Report
学習障害児および健常児における数概念からたし算習得にいたる発達過程
Project/Area Number |
10780125
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大塚 玲 静岡大学, 教育学部, 助教授 (00233172)
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Keywords | 学習障害 / 健常児 / 数概念 / たし算 / 発達過程 |
Research Abstract |
本研究では、就学前児の数概念の発達順序性を明らかにするために、3歳1か月から6歳6か月の幼児120名を対象に次のような諸課題を実施した。数字・数詞対応課題、計数課題、順唱課題、分割順唱課題、分割逆唱課題、多少判断課題、連続量課題、序数課題、合成分解課題、作業記憶課題、足し算課題、引き算課題の12課題である。 その結果を基に各課題項目を2項目ずつ対にして、Ordering analysisを行い順序性を判定し、各領域ごとと全体についての項目ネットワークを構成した。その結果、各領域ごとの項目ネットワークでは、多くは一次元的傾向を示した。それらは、そこに含まれる項目群の獲得の順序性を示し、設定された領域の項目系列が一次元的であることを示している。全体では複雑で多次元的な項目ネットワークが構成された。そして、数唱から計数能力、足し算・引き算能力獲得の一連の発達過程がFuson(1988)の計数能力の発達モデルに対応するものであった。本研究で構成された項目ネットワークは、数概念の発達はそれぞれの数概念のスキルの熟達や操作可能な数の範囲の拡大、作業記憶の容量の変化等、さまざまな要因が影響し、多次元で複雑な様相を示すことを表している。この項目ネットワークを用いることで、学習障害児や計算に困難を抱える学習不振児に対して、その子どもがどの段階でつまずいているのか、あるいはつまずきやすいのかを見通すことができ、指導を考える上で非常に有効であると考えられる。
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