1998 Fiscal Year Annual Research Report
文法性判断テストと学習者の内省による中間言語理論構築の試み
Project/Area Number |
10780143
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小山 悟 九州大学, 留学生センター, 講師 (50284576)
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Keywords | 日本語 / 第2言語習得 / テンス / アスペスト / 中間言語 / 文法性判断 / 内省 |
Research Abstract |
テンス・アスペクトの習得については、これまでの研究で、第1言語学習者も第2言語学習者も“lexical aspect"と呼ばれる動詞の意味的な特性の影響を強く受けることがわかっている。例えば「進行」を表す動詞形態素(日本語の「テイル」に相当)は、始めに“Activity"の動詞から習得が始まり、その後“Accomplishment"や“Achievement"の動詞へと習得が進んでいくことが明らかになっているが、これは「進行」というカテゴリーが“Action-in-progress"というプロトタイプを持ち、[-限界性(-telic)]、[-瞬間性(-punctual)]という意味成分で表せるため、この2つの意味的な特性を持つ“Activity"の動詞と始めに結びつきやすいのだと解釈されている。この現象は一般に「Primacy of Aspect」として広く知られているが、これまでの研究は(1)学習者の発話に現れた動詞形態素の使用を分析するという方法で行われているものが多く、(2)研究の対象も習得の初期段階に向けられたものが多い。そこで、本研究では、日本語のテンス・アスペクトの習得について、初級から中級後半までの日本語学習者75名を対象に文法性判断テストとインタビューによる調査を行った。調査の結果、明らかになったことは以下の通りである。 (1) 文法性判断テストにおいても、やはり学習者は動詞の意味的な特性の影響を受ける。 (2) 学習者は習得の初期の段階において、出来事を発話時(speech time)と事象時(event time)の関係で捉えることはできるが、認知時(reference time)の観点から捉えることはできない。そのため、始めは「ル=未来、テイル=現在、タ=過去」とい図式を当てはめる。 (3) 「テイル」には[-限界性]、[-瞬間性]の他に「+眼前性」を想定すべきである。 (4) 「ふとる」や「おなかがすく」などは“Achievement"の動詞でありながら、学習者は[+限界性]や[+瞬間性]よりも[+状態性]の方に目を向ける。 (5) 中国語話者と韓国語話者の間には「母語の影響」と思われる明らかな違いがある.
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