1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10780235
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
宮田 高志 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助手 (00283929)
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Keywords | 文法開発 / 単一化文法 / JPSG / 素性構造 / 対話システム / グラフィカルユーザインターフェース |
Research Abstract |
昨年度にひきつづき、対話システムに予め与えておく一般的な文法の開発ならびにその開発のための支援環境作りを行なった。とくに文法の開発に関しては、基盤研究(B)「制約に基づく文法の連続量の概念を取り入れた拡張の研究」のメンバーと意見交換を行ない、その結果得られた知見を積極的にとりいれた。これらの知見は基盤研究(B)の成果として報告するのでここでは詳しくは述べないが、格助詞の省略・格助詞句のかきまぜ・サ変動詞・コーパスに基づく連体修飾の調査および分類の結果などを文法にとりいれることができた。 また、昨年度作成した文法開発支援環境のうち、実行の順序を明示したトレースを行なう文法デバッグ支援システムについて、機能が不十分で情報の視覚化方法も分かりにくいことが上記の文法を開発する際に判明した。そこで、この部分について全面的に仕様を見直し、隣接する句を選択した後、文法中に定義されたスキーマや原理を試行錯誤で適用できるようなシステムを構築した。 さらに文法開発において、「スキーマ・原理および一部の語彙項目を与えた時に、入力文中の未知語について可能な素性構造を網羅的に計算する機能」が必要であることが分かった。JPSGに基づく文法の開発はほとんどが語彙項目に対する素性構造を定義することに帰着される。この素性構造の定義は現在のところ、さまざまな理論言語学上の知見を反映するように完全に人手で試行錯誤を行なうか、もしくは帰納的学習の手法を使って完全に自動的に行なうかの両極端な方法が主流である。しかし、問題の難しさからいって両者を組合わせた方が現実的である。文法開発支援環境にとって上記のような「可能な素性構造を網羅的に計算する機能」の実装は今後の課題である。 ユーザの次発話予測モジュールおよび文法適応モジュールに関する研究については、残念ながらあらたな知見を得るにはいたっていない。文法自身がまだ十分な被覆率をもっていないことが一番の理由であるが、問題はもう少し複雑である。Pustejovskyの生成語彙に関する理論では、人間は厳密には統語的でない文を受け取っても、語彙項目の情報から動的・派生的に"あらたな"語彙項目を作ってその文を解釈するとしており、そこでは「統語的でない」すなわち解析に(一度は)失敗することが派生のきっかけとなっている。本研究の文法適応にもこのような派生のしくみが必要であると考えるが、そのためには初期文法がどのような文を許容し、どのような文を派生によって解析するかを決めなければならない。この点に関する考察も今後の課題である。
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Research Products
(1 results)