1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10780315
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 知洋 東京大学, 工学部・附属総合試験所, 助手 (40282496)
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Keywords | イオン照射 / 金属クラスター / 高濃度イオン注入 / ラザフォード後方散乱分析 / 原子間力顕微鏡 / 絶縁性セラミックス |
Research Abstract |
本研究においてはイオン照射によってセラミックス中へ機能層の作製を行うことを目的として、単結晶アルミナに対する鉄、ニッケル及び銅の遷移金属イオンの高濃度注入実験を行った。 ニッケルイオン、鉄、銅の各イオン注入試料についてX線回折(XRD)測定によりクラスター(金属相)の検出を行った。その結果全ての試料において金属クラスターの生成が確認され、その平均粒径はそれぞれ14nm(Ni)、4nm(Fe)、5nm(Cu)であった。照射欠陥の回復およびクラスターのサイズ制御を行うため、1073K、空気中において熱アニールを行った結果、短時間のアニールにより鉄の場合は20nm、銅の場合には40nm程度までクラスターが成長することが明らかになり、クラスターサイズが制御可能であることが示された。 鉄クラスターのサイズはアニールを継続することによって減少に転じたが、銅のクラスターは継続的に成長し、100nm以上に達した。このクラスター成長挙動の違いを検討するため、ラザフォード後方散乱分析(RBS)によって元素の拡散挙動を測定した結果、鉄の場合には表面方向への選択的拡散により、酸化物が析出していることが明らかになった。表面に析出したヘマタイト層は原子間力顕微鏡(AFM)観察およびXRDの結果より、アルミナ基板との相互作用によって配向成長していることが明らかになった。この析出層は酸化物同士が複合酸化物を介して連続した組成変化により接合を形成したものと考えることも可能で、これまでにない改質効果として注目に値する。一方、銅の場合にはアモルファス化したマトリックスの再結晶が完了するとともに表面側への拡散は起こりにくくなり、クラスターが成長することが明らかになった。注入イオンの存在状態に関しては、鉄原子の濃度が高い飛程付近においては金属状態が支配的であり、浅部の濃度が低い領域においては酸化された状態が支配的であることが明らかになった。 次年度においては、得られた原子層(金属クラスター分散層)における電気的および光学的物性の変化を測定し、付与された機能に関する検討を行う。
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[Publications] T.Kobayashi: "Properties Of wetallic ions implanted into sapphire" Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B. 148. 1059-1063 (1999)
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[Publications] T.Kobayashi: "Thermal annealing behavior of iron implanted into alumina" Ion Implantation Tecnnology. (発表予定). (1999)