1998 Fiscal Year Annual Research Report
水文環境の変化に伴う染色業の分布形態に関する実証的研究
Project/Area Number |
10780327
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
宮岡 邦任 文教大学, 教育学部, 講師 (70296234)
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Keywords | 染色業 / 伝統産業 / 水文環境 / 地下水 / 関東地方 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本における伝統産業のーつである染織業を対象に、時代の変遷を通した分布形態の変化から、環境変化に伴う産業への影響を検証することにある。研究対象地域は、関東地方とその周辺地域である。 第一年度は、過去の分布形態を把握するための資料収集調査を行い、その結果をもとに二地域を対象に地下水を中心とした水文調査を実施した。今年度の現地水文調査地域は栃木県田川流域および群馬県渡良瀬川中流域である。 関東地方における染職業工場の分布は、江戸から明治・大正初期頃までは、主に江戸および東京中心部周辺に分布していた。しかし、関東大震災、第二次世界大戦などによる疎開、時代をとおしての東京への人口・産業の集中による河川の水質悪化により徐々に埼玉県南部・東京多摩地域などのような郊外に移動を始める。この傾向は高度経済成長時代頃に顕著にみられる。これとは別た、八王子、飯能、伊勢崎、桐生、宇都宮といった関東平野周辺山地と平野部との境界に発達した谷口集落において、古来染職業が盛んに行われていた。これは、これらの地域が養蚕の盛んな地域でもあることが背景にあるようである。従って、近年の養蚕業の衰退に伴い、これらの地域の染職業も徐々に衰退傾向にある。また、これらの地域において近年の地下水位の低下や河川水の汚染といった染織に不可欠な大量の汚染されていない水の確保が問題になっている。 水文調査の結果、現在の水文環境については基礎データが揃いつつある。今後、過去の水質をはじめとした水文データの収集をとおし、過去と現在との環境の比較検討を行う必要がある。
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