1998 Fiscal Year Annual Research Report
食虫動物の麻酔作用物質の単離と構造および活性発現の分子機構
Project/Area Number |
10780352
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
末永 聖武 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60273215)
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Keywords | トガリネズミ / 麻酔物質 / カルシウムイオン流入阻害 / だ液腺 |
Research Abstract |
トガリネズミは餌とするミミズを噛んで麻酔をかけ、巣穴に貯蔵する習性を持つことが知られているが、その麻酔作用機序および作用物質については明らかにされていない。哺乳類の動物由来の麻酔物質はこれまで知られておらず、トガリネズミの唾液には特異な化学構造と新たな機能を有する物質の存在が期待される。そこで麻酔物質の発見を目指して本研究を行った。 まず、昨年の夏から秋にかけて北海道北部および東部でトガリネズミを約100頭採集した。トガリネズミを捕らえるトラップの場所などを検討し、従来の採集法に比べて多くの抽出材料を得ることが出来た。また、抽出方法にも検討を加えた。従来、動物の頭部全体を抽出していたが、唾液腺を摘出したのち含水エタノールで抽出した。この抽出物は細胞へのカルシウムイオン流入を強く阻害する作用を持つことを見出し、これを指標としてトガリネズミの唾液腺抽出物について分離精製を行った。精製は逆相の高速液体クロマトグラフィーを用いて行い、3段階の精製により活性成分を濃縮することが出来た。活性画分はまだ混合物であるが、活性物質はかなり極性の高い水溶性の化合物で、酸および熱にはある程度安定であることが分かった。今後、活性画分についてさらに精製を進め、麻酔物質の単離と化学構造の解明を目指して研究を続けていきたい。 また、カルシウムイオン流入阻害活性以外にもミミズやブドウムシなどの小動物への直接的な作用についても検討を進めている。
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