1999 Fiscal Year Annual Research Report
複数のオルガネラに局在する酵素・長鎖アシルCoAシンセターゼの膜移行機構
Project/Area Number |
10780365
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上条 桂樹 信州大学, 医学部, 助手 (10252074)
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Keywords | タンパク質の選別輸送 / 局在化シグナル / オルガネラ / ミトコンドリア / 小胞体 / ペルオキシソーム / 膜タンパク質 / アシルCoAシンセターゼ |
Research Abstract |
リボソームで新しく合成されたタンパク質は,それぞれの局在化情報(シグナル)にしたがって細胞内のさまざまなオルガネラに選別輸送される.長鎖アシルCoAシンセターゼ(LACS)は,その活性がミトコンドリア,小胞体,ペルオキシソームの3つのオルガネラに認められ,その酵素化学的性質から,同一タンパク質が異なるオルガネラに分布する可能性が示唆されていた. LACSのオルガネラヘの局在の分子機構を検討するために,ラット肝臓cDNAよりクローン化したLACSを培養細胞内で発現させ,局在を蛍光抗体法および免疫電子顕微鏡法により観察した.この結果,発現したLACSタンパク質はミトコンドリアの外膜と小胞体膜に移行した.また,LACSとオワンクラゲの発光タンパク質であるGFPの融合タンパク質を発現させ,細胞を生きたまま観察しても同様の結果が得られた.こうしたことからLACSは,同一遺伝子産物が,ミトコンドリア外膜と小胞体膜という異なるオルガネラ膜に2重に局在することが明らかとなった. LACSの欠失変異体および配列の一部とパッセンジャータンパク質(DHFR,CAT,GFP等)との融合タンパク質を発現させる実験からオルガネラ膜への移行に必須の配列を検討した.この結果,LACSのN-末端側から約30-50残基に相当する疎水性アミノ酸が連なる領域と,それに続く塩基性アミノ酸を多く含む部分がオルガネラ移行のシグナルとして働くことが明らかになった.シグナル配列中の疎水性領域のアミノ酸を,荷電を持つアミノ酸(酸性,塩基性アミノ酸等)に置換すると,オルガネラヘの移行は認められなくなった.一方,この領域のアミノ酸を,疎水性または親水性で荷電のない残基に置換してもシグナルとして機能した.さらに,このシグナル配列中の疎水性部分のみをパッセンジャータンパク質につなぐと,局在は小胞体膜に限られた.こうしたことから,LACSのオルガネラヘの移行において,シグナル配列中の疎水性領域は2つのオルガネラの膜との相互作用に,塩基性部分はミトコンドリア外膜への移行に重要な役割を果たしていると考えられる.
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