1998 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリオロドプシンの励起状態ダイナミクスのランジャバンモード解析
Project/Area Number |
10780407
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
倭 剛久 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90251587)
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Keywords | バクテリオロドプシン / イエロープロテイン / 分子動力学シミュレーション / 励起状態 / 光異性化 |
Research Abstract |
光容蛋白質のエネルギー変換やシグナル伝達機能は生命活動にとって重要である。そのメカニズムの解明には原子レベルで蛋白質の振る舞いを記述する分子動力学シミュレーションが役立つ。本研究の主要な研究成果をまとめると以下の3点になる。(1)バクテリオロドプシンの光異性化反応の詳細な機構、(2)イエロープロテインの光吸収直後のダイナミクス、(3)方法論とソフトウエアの開発。 (1) 光異性化反応を計算機で再現するには発色団レチナール近傍の構造を正確に構築する必要がある。シッフ塩基プロトンに水分子を水素結合させると、500fsの時間オーダーで高効率の光異性化をシミュレートすることができた。われわれはこの水分子を「潤滑水」と呼ぶことにした。異性化と同時にシッフ塩基プロトンと水分子との間の水素結合が常に切れていた。室温のシミュレーションでレチナール近傍の構造を調べると、Thr89-Asp85一潤滑水-Asp212-Tyr185の水素結合ネットワークが安定に保存されていた。潤滑水を置かないモデルでは、500fsの時間オーダーでの光異性化を再現できなかった。従って、上述の水素結合ネットワークが高効率の光異性化反応にとって重要であると考えられる。 (2) 本研究では発色団励起直後のイエロープロテインのダイナミクスを調べた。いつくかのアミノ酸が発色団の電子状態変化に敏感に応答している様子が明らかになった。これらのアミノ酸は3つの異なるバクテリアでよく保存されており、発色団近傍に位置するものが多かった。 (3) 本研究では、光吸収シミュレーション法を開発して用いた。ベクトル並列計算機を利用するため、分子動力学シミュレーションのプログラムの並列化を実行した。そして高い効率の並列化に成功した。近年分子動力学シミュレーションはますます盛んに行われ、数十ナノ秒の時間スケールで水和ぺプチドのへリックス形成にも成功している。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] M.TAKANO,T.YAMATO,J.HIGO,A.SUYAMA,K.NAGAYAMA: "MOLECULAR DYNAMICS OF A 15-RESIDUE POLY(L-ALANINE) IN WATER: HELIX FORMATION AND ENERGETICS" J.Am.Chem.Soc.121・4. 605-612 (1999)
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[Publications] H.WAKO,T.YAMATO: "NOVEL METHOD TO DETECT A MOTIF OF LOCAL STRUCTURES IN DIFFERENT PROTEIN CONFORMATIONS" Protein Engineering. 11・11. 981-990 (1998)
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[Publications] T.YAMATO,N.NIIMURA,N.GO: "MOLEULAR DYNAMICS STUDY OF FEMTOSECOND EVENTS IN THE PHOTOACTIVE YELLOW PROTEIN AFTER PHOTOEXCITATION OF THE CHROMOPHORE" PROTEINS : Structure,Function,and Genetics. 32・3. 268-275 (1998)
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[Publications] S.YAMAMOTO,H.WASADA,T.KAKITANI,T.YAMATO: "Ab initio MO STUDY ON THE POTENTIAL ENERGY SURFACES FOR TWISTNG AROUND C_<11>=C_<12> BOND OF PROTONATED SCHIFF BASE OF RETINAL" THEOCHEM. 印刷中.