1998 Fiscal Year Annual Research Report
モルヒネ依存時のアデニル酸シクラーゼ遺伝子変化:μ受容体欠損マウスを用いた解析
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10780485
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
船田 正彦 第一薬科大学, 薬学部, 講師 (20299530)
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Keywords | モルヒネ依存 / アデニル酸シクラーゼ / μ受容体 |
Research Abstract |
本研究では、μ受容体ノックアウトマウス(MuKO)および親の系であるC57BL/6Nマウスを用い、モルヒネ依存形成に関与する脳内アデニル酸シクラーゼ・サブタイプを同定し、μ受容体の細胞内情報伝達における役割を解析した。モルヒネ依存時の行動解析では、モルヒネ(8-45mg/kg,s.c.)を1日2回5日間にわたって慢性投与し、モルヒネ最終投与3時間後、ナロキソンを投与して行動観察を行った。MuKOおよびC57BL/6Nマウスでナロキソン投与で誘発される退薬症候を比較したところ、ナロキソン誘発ジャンピング行動はC57BL/6Nマウスで15±2.5回の出現であったが、MuKOでは0回であり有意に抑制されていた。したがって、モルヒネ依存形成機構にμ受容体が関与していることが明らかになった。また、モルヒネ依存時のアデニル酸シクラーゼmRNAの変動について検討を行った。本研究では、RNaseプロテクション・アッセイを利用してアデニル酸シクラーゼtype I、II、VおよびVIIIのmRNAの定量を行った。実験には、μ受容体ノックアウトマウスおよび親の系であるC57BL/6Nマウスを使用した。モルヒネ慢性投与は上記と同様に行い、モルヒネ最終投与3時間後、脳を摘出した。ターゲットとする脳部位は、大脳皮質、線条体、側坐核、中脳および小脳の5部位とした。その結果、モルヒネ慢性投与によってC57BL/6Nマウスの大脳皮質および側坐核においてtype IIおよびVのmRNA量の増加が認められた。一方、MuKOでは、有意な変化は認められなかった。これらの結果から、モルヒネ依存形成に、μ受容体を介したアデニル酸シクラーゼtype IIおよびVの機能変化が関与する可能性が示唆された。
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