1999 Fiscal Year Annual Research Report
ラット大脳皮質培養細胞を用いたニューロン間のシナプス形成機能の解析
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10780488
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
村本 和世 財団法人 東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 主事研究員 (10301798)
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Keywords | シナプス形成 / 大脳皮質 / 副嗅球 / 共焦点レーザー走査顕微鏡 / 免疫細胞染色 / 初代培養細胞 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、ラット大脳皮質初代培養細胞系を用いて、ニューロン間のシナプス形成過程に関する研究を続けてきた。シナプス形成の解析法として、培養ニューロンの自発的神経活動をカルシウムイメージング法を用いてモニターしたり、電子顕微鏡を用いた観察などを用いてきたが、前者は確実性・定量性などで若干の問題があり、後者は利便性に難点があった。本年度は、大脳皮質や副嗅球など中枢培養神経細胞を用いた実験系、ことに培養系でのシナプスの形成や脱落を可視化して観察する新しいシステムについて検討した。シナプスに局在するマーカー蛋白質に対する抗体を用いた免疫細胞染色を行い、共焦点レーザー走査顕微鏡観察と高精細3次元画像構築ソフト・IMARISなどを用いて、シナプスレベルでの形態的変化の観察を試みた。いずれの抗体によっても、ニューロンの細胞体、樹状突起上などに、シナプス様の細かい粒状の染色像が観察され、中枢神経細胞培養系内で、多数のシナプスが形成されていることが可視化できた。用いる抗体により、例えば、興奮性シナプスについては抗NMDA受容体抗体、抑制性シナプスについては抗GABA_A受容体抗体や抗Glutamic Acid Decarboxylase(GAD)抗体などを用いることにより、興奮性、抑制性のシナプスを分けて観察したり、シナプス前と後シナプスを別々に観察することが可能となった。さらに、三次元構築した共焦点画像を、IMARISを用いて処理加工した。これまでの共焦点レーザー顕微鏡観察でも、ニューロンの細胞体、樹状突起上に分布するシナプスを捉えることができたが、画像解析ソフトを用い、染色像を360度回転させることにより、理論上はあるニューロンに存在する全てのシナプスが観察可能であり、シナプスの詳細な位置関係や形状なども調べることができるのである。このシステムを用いることで、培養ニューロン間に形成されたシナプスの形態・数そしてその変化などを、電子顕微鏡を用いるのよりもはるかに簡便かつ詳細に追跡できる可能性がある。さらに、薬剤処理や損傷を与えた後のシナプスの変化を経時的に追跡したり、定量的に評価したりすることも可能であり、応用として、シナプス形成を促進するような因子の選別も容易に行なえると思われる。
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[Publications] Kazuyo MURAMOTO 他: "Characteristics of synapses formed between cultured neurons of rat accessory olfactory bulb"Society for Neuroscience Abstract. 25. 1278 (1999)
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[Publications] Midori KATO 他: "Developmental Changes of the localization of GABAergic synapses in cultured neurons"Society for Neuroscience Abstract. 25. 1278 (1999)
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[Publications] 村本和世: "鋤鼻系ニューロンの培養系によるフェロモンの研究"Brain Medical(特集・脳とフェロモン). 11(2). 176-182 (1999)
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[Publications] 村本和世・黒田洋一郎: "ATPとシナプス形成"Gout and Nucleic Acid Metabolism. 23(2). 111-123 (1999)
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[Publications] Kazuyo MURAMOTO 他: "Primary culture system of rat accessory olfactory bulb"Neuroscience Research Supplement. 23. S89 (1999)