1998 Fiscal Year Annual Research Report
教育関係におけるパターナリズムの研究:医療者-患者間の談話分析を通して
Project/Area Number |
10831005
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
山口 恒夫 信州大学, 教育学部, 助教授 (60115384)
|
Keywords | パターナリズム / 会話分析 / 自己決定権 / インフォームド・コンセント / 教育関係 |
Research Abstract |
本研究は、2年間の研究期間中に、教育関係における「パターナリズム」が、現実にどのような談話(ディスコース)に現れ、それがどのような影響をもたらすのかを、医療者-患者関係における両者の語り(narratives)を分析対象として調査研究するものである。研究の1年目である今年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1. 「メディカル・パターナリズム」の概念を整理するため、国内外のデータベースを用いて先行研究の検索を行った。その結果、パターナリズムに関する研究にはJ.Kleinig、G.Dworkin、湯浅慎一、澤登俊雄等の先行研究があるものの、医療者と患者間の談話分析に立ち入って研究を行っているものはいないことが明らかとなった。 2. 長野緩和ケア研究会に所属する医師、看護婦、ケースワーカー等の研究協力者とともに、事例研究を定期的に行い、医療現場における「隠れたパターナリズム」の実態を析出した。 3. 先進的なインフォームド・コンセントの実践に取り組んでいる医療機関(愛和病院、京都薬師山病院、桜町病院等)を訪問し、[2]で行った「隠れたパターナリズム」の実態との比較から、医療者-患者関係のような非対称的関係(「教える-学ぶ」関係)における「パターナリズムと自己決定権」、「パターナリズムの正当化の条件」等の問題点の整理を行った。 4. 以上の知見をもとに、次年度の行う医療者-患者間の会話分析のカテゴリーを次のように設定することとした。治療者の語り[(1)言葉による説明、(2)図や写真による説明、(3)患者への質問、(4)患者の感情の受容、(5)励まし、(6)勧告・提案、(7)促し・説得、(8)質問への回答]。患者の語り[(9)患者の質問、(10)質問への応答、(11)苦痛や症状の訴え、(12)患者の要求、(13)患者・家族間の語り、(14)独白]。[(15)沈黙・とまどい・混乱]
|