1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10832007
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Research Institution | FUKUSHIMA MEDICAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
本間 美和子 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (40192538)
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Keywords | 細胞老化 / 細胞内情報伝達系 / イノシトールリン脂質代謝 |
Research Abstract |
本研究は、細胞老化に伴い増殖刺激への反応性が低下すること、すなわち増殖シグナルの衰退がどのようなメカニズムにより生じているのかを明らかにすることを目的とした。 これまでの研究で、1)若年ヒト線維芽細胞では血小板由来増殖因子(PDGF)刺激により、初期反応としてイノシトールリン脂質代謝関連酵素であるホスホリパーゼC(PLC)の速やかな活性化が観察されるのに対し、老化細胞ではPDGF刺激にともなうPLC活性化がみられないこと、2)この場合若年と老化細胞ではイノシトールリン脂質代謝の基礎レベルに相違はみられないこと、PLCの発現量や定常レベルでの内在PLCの活性も、差異はみられないこと、3)PI-3kinaseの下流に存在する複数の内在性プロテインキナーゼの活性化が老化細胞では減弱していること、等を明らかにしてきた。これらの結果は、老化細胞においては、受容体刺激後PLC活性化に至る経路のどこかを阻害する原因が存在することを示唆する。 我々は、老化細胞にみられるシグナル減弱化には、RNAエディテング(編集)が関与しているのではないかと考えた。すなわちゲノムDNAに変化はないが、転写産物中(mRNA)のアデニンがアデノシンデアミナーゼによりイノシンやグアニンへ置換される結果、アミノ酸一次構造に変異が生じ、結果として分子間の相互作用とシグナル伝達に変化を生じるというものである。本研究では、このエディテング機能の対象として、PDGF受容体と、エフェクター分子であるPLC-γ1に着目した。PDGF受容体αとβのinternal domainとPLC-γ1 X,Y domainについては、老化細胞において発現するそれらのmRNAを材料としてcDNAクローニングを行い、DNAシークエンによる解析をおこなったところ、複数のクローンについて若年細胞とは異なる変異が見い出された。これらの変化はエディテングによるものである可能性が考えられることから、細胞老化による増殖シグナル減弱化を説明し得るものとして注目される。現在、老化細胞で見い出されたのと同じ変異タンパクを若年細胞に発現させ、増殖へどのような影響を及ぼすのかについて検討中であり、RNAエディテングに伴うシグナル減弱化メカニズムの全容解明に向けてさらに解析を進めているところである。
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[Publications] Nonaka,M.et al.: "Opsonic Complement Component C3 in the Solitary Ascidian"J.Immunology. 162. 387-391 (1999)
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[Publications] 本間 美和子: "新用語ライブラリー 細胞内シグナル伝達 第2版"山本 雅/編. 217 (1999)