2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10832008
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
石井 直明 東海大学, 医学部, 助教授 (60096196)
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Keywords | 酸化ストレス / 老化 / C.elegans / ミトコンドリア / シトクロームb / 電子伝達系 / 複合体II / 寿命 |
Research Abstract |
活性酸素が老化の一因であることを実証するために、線虫の一種C.elegansより酸素に高い感受性を示す短寿命突然変異体であるmev-1を分離した。本研究においてmev-1の原因遺伝子が、ミトコンドリア内膜に存在し、電子伝達系で働くシトクロームb_<560>(複合体IIのサブユニット)であることを見い出した(Nature,1998)。mev-1では複合体IIの活性が野生株の10%にまで低下していた。 本年度は以下のことについて検討をおこなった。 1.エネルギー代謝への影響:mev-1の異常による複合体IIの活性低下がエネルギー代謝に及ぼすことが考えられる。しかしmev-1ではATPの濃度に変化は認められず、代謝の中間産物であるクエン酸やコハク酸の蓄積は認められなかったが、乳酸の濃度が有意に上昇し、アシドーシスを生じていた。 複合体Iの活性は野生株と同じであることから、mev-1では解糖型が亢進しているか、あるいはエネルギー消費を抑制することによりATP量を維持しているものと考えられる。 2.活性酸素の発生とグルタチオン:mev-1の異常と酸化ストレスの関係を調べるために、活性酸素の発生量を高感度に測定できる装置で測定した。その結果、mev-1の活性酸素の産生量は野生株の1.5倍に上昇していた。一方、活性酸素の消去系に関与していると考えられているグルタチオンの濃度は有意な減少が認められ、発生した活性酸素の消去が強くおこなわれていることを示唆した。 これらのことから、mev-1における酸素感受性や短寿命の形質は、過剰に産生された活性酸素による細胞の傷害と、アシドーシスをともなうエネルギー代謝の変化により引き起こされていると考えられる。
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[Publications] 石井直明: "老化の正体はみえたのか"遺伝. 54(1). 13-17 (2000)
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[Publications] 石井直明 他: "老化研究の現状を21世紀の展望(対談)"遺伝. 54(1). 36-46 (2000)
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[Publications] 安達宏 他: "老化研究の新たな展開:Caenorhabditis elegansの老化遺伝子"日本線虫学会. 29(2). 1-6 (2000)
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[Publications] 石井直明: "酸化ストレスと老化関連遺伝子"日本老年医学会. 37(1). 360-367 (2000)
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[Publications] 妹尾(松田)七美 他: "ミトコンドリア機能と老化"化学工業. 51(5). 360-367 (2000)
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[Publications] Adachi,H 他: "Effects of tochotrienols on life span and protein carbonylation in Caenorhabdidit elegans"J.Gerontology : Biol.Sci.. 55A(6). B280-B285 (2000)
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[Publications] Miyadera,H 他: "Altered quinone biosynthesis in long-lived clk-1 mutant of C.elegans"J.Biol.Chem.. (In press). (2001)
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[Publications] 石井直明: "フリーラジカルの臨床(共著)"日本医学館. 6 (2000)
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[Publications] Ishii N et al: "The Molecular Genetics of Aging"Springer. 16 (2000)
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[Publications] 石井直明: "分子レベルで見る老化"講談社. 217 (2001)