Research Abstract |
1. 聴取者の動きに追従して頭部伝達関数の切りかえを行うことにより,聴取者の動的な動きに対応することが可能な,音空間再生システムを構築した.このシステムは,50 MFLOPSのDSPを複数個使用したもので,これまでに,頭部の動きに対し,20ms程度の遅れで頭部伝達関数を変化させることが可能となっている.現在,この遅れ時間を更に半分程度に短縮し,実時間性をより高めるための作業を行っている.この作業が終了し次第,遅れ時間の検知限,弁別限を明らかにするための実験を開始する.またあわせて,頭部伝達関数の切り替えパターンが定位に与える影響を調べるための実験も行う予定である. 2. 上記のシステムを用いて,聴取者の動きに追随して頭部伝達関数を切り替えるか否かが,音空間知覚に及ぼす影響について考察する前段階として,聴取者の頭部の運動を許した場合と積極的に運動を許した場合の音像定位能力について聴取実験を行った.この実験では,刺激音として,低周波数帯域雑音,高周波数帯域雑音,広帯域雑音を用い,またその持続時間を100msから3sまで変化させ,水平面内の音像の定位精度との関係を調べた.その結果,低周波数帯域雑音について,特に,頭部回転の影響/効果が大きく表われることが明らかになった.また,この実験に際しては,頭部に運動センサーを置き,頭部を積極的に移動させて音空間知覚を行わせたときの,頭部運動のパターンを詳細に検討した.その結果,頭部の回転は,正面と音像の方向の中間の方向までに留まる場合が多いことや,水平面の定位を行わせているにもかかわらず,縦方向の頭部運動がはっきりと観察されることなどの知見を得た.現在,これらの成果を公表する準備を進めている.
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