1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10836003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 正人 北海道大学, 大学院地球環境科学研究科, 教授 (30091440)
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Keywords | ショウジョウバエ / 温帯適応 / 休眠 / 分子系統 |
Research Abstract |
亜熱帯域の西表島でショウジョウバエ相の調査を行った結果、69種が確認され、そのうち10種は新種であった。これらのショウジョウバエのうち、冷温帯域である北海道まで分布しているものは、人家性種を除くと、D.suzukiiとD.coracinaだけであった。このうち、D.suzukiiは北海道において越冬できるかどうかは疑問であり、真に亜熱帯域から冷温帯域まで分布している種はD.coracinaのみと言える。今後、この種の生活史、温度適応を調べることにより、何故この種が亜熱帯にも冷温帯にも分布できるのかを明らかにする予定である。 これまでの研究から、熱帯から温帯域に分布を広げるためには、休眠を進化させる必要があることが分かっている。そこで、亜熱帯種のなかに、温帯進出の前適応として、休眠機構を進化させている種がいるかどうかを、卵巣の発育状況の季節的変化についてのデーターに基づき調べた。その結果、D.darumaが冬季に卵巣を発達させておらず、休眠を進化させている可能性がある。今後、本種がほんとうに休眠するかどうか、すれば、その誘起機構について、室内実験により調べる予定である。 次に、タカハシショウジョウバエ種群とトラフショウジョウバエ穏群について、現在、温帯に分布している種に系統的に最も近縁な熱帯種がどれであるかを、cytochrome oxidase subunitl(COI)の塩基配列をもとに調べた。その結果、現在、温帯種として知られている種は、亜熱帯種とは系統的に比較的遠く、これらの種の温帯への適応はかなり古い時期に起こったものと考えられた。今後、これらの種群の温帯種と亜熱帯種について、その生態、生理を比較することにより、これらの種群で温帯適応がどのように起こったかを明らかにする予定である。
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